代数幾何と学習理論 - 特異点

2017-02-22 (Wed.)

機械学習

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多項式と解析関数

非負整数の組 \(\alpha = (\alpha_1 ... \alpha_d)\) とベクトル \(x = [x_1, x_2, \ldots, x_d]\) について

\[x^\alpha = \prod_i x_i^{\alpha_i} = x_1^{\alpha_1} x_2^{\alpha_2} \cdots x_d^{\alpha_d}\]

と定義する. このような \(\alpha\)\(d\) 次の 多重指数 という.

多項式

\(\alpha\) を添え字とするような (実) 定数 \(a_\alpha\) を用いて、無限級数は

\[f(x) = \sum_\alpha a_\alpha x^\alpha\]

と書くことが出来る. たかだか有限の \(a_\alpha\) が非ゼロである無限級数を 多項式 という.

解析関数

\(d\) 次元ベクトル \(b\) を含む開集合 \(U\) において 無限級数 \[f(x) = \sum_\alpha a_\alpha (x - b)^\alpha\]

絶対収束 するとは、

\[\sum_\alpha |a_\alpha| \cdot |x-b|^\alpha < \infty\]

が成り立つこと. またそのような級数を 収束冪級数 という. \(x \in U\) において無限級数 \(f(x)\) は和の順序によらずに値を定める. つまり \(\mathbb{R}^d \to \mathbb{R}\) という関数を定める. この関数を (実) 解析関数という.

三角関数は無限級数として書けるので解析関数だが、多項式ではない. ただし解析関数として扱う場合には絶対収束するように適切な定義域 \(U\) を設定する必要がある.

偏微分

\(d\) 次の多重指数 \(n = (n_1, n_2, \ldots, n_d)\) による偏微分を次で定義する.

\[\partial_n f(x) = \frac{\partial^N f(x)}{\partial x_1^{n_1} ~ \partial x_2^{n_2}~\cdots~\partial x_d^{n_d}}\]

\(N \leq r\) なる任意の \(n\) について \(\partial_n\) が出来るとき \(C^r\) 級という. 解析関数でかつ\(C^\infty\)級なものを \(C^\omega\)級であるという.

代数的集合と解析的集合

代数的集合

多項式 \(f(x)\) について、その零点が作る集合を \[V(f) = \{ x \in \mathbb{R}^d : f(x) = 0 \}\] と書いて、これを 代数的集合 という.

また、再帰的に \[V(f_1, f_2) = V(f_1) \cap V(f_2)\] を定義する.

解析的集合

実ユークリッド空間の開集合 \(U\) から \(\mathbb{R}\) への解析関数の零点が作る集合 \[\{ x \in U : f(x) = 0 \}\]解析的集合 という.

例えば \(\{(x,y) : \cos(x) - \sin(y) = 0 \}\) は代数的集合ではないが、 解析的集合である.

臨界点と特異点

解析関数 \(f : U \to \mathbb{R}^d\) と点 \(x \in U\) について、 \[\text{grad} f(x) = \nabla f(x) = \left( \frac{\partial f}{\partial x_1}(x), \ldots, \frac{\partial f}{\partial x_d}(x) \right) = 0\] を満たすとき、 その点 \(x\)臨界点 (critical point) という. 臨界点でない点を通常点という.

一般に、臨界点は極大点か極小点かであって、どちらでもない点を 鞍点 という. 例えば \(f(x, y) = x^2 - y^2\) における原点 \((x, y) = 0\) は鞍点である.

同型 (isomorphism)

2つの開集合 \(U, V \subseteq \mathbb{R}^d\) について 全単射 \(f : U \to V\) があって、 \(f\)\(f^{-1}\)\(C^r\)級なら、 \(U\)\(V\)\(C^r\)級同型 であるという
さらに、\(f\)\(f^{-1}\) も解析関数であるとき、 \(U\)\(V\) とは 解析同型 であるという

特異点

集合 \(A \subseteq \mathbb{R}^d\) において点 \(P \in A\)非特異点 であるとは、 ある開集合 \(U\) (\(P \in U \subseteq \mathbb{R}^d\)) と開集合 \(V\) があって、 \(U\)\(V\) に解析同型を与えるある解析関数 \(f\) があって

とできること. 特異点 (singularity) とは非特異点ではない点のこと.

集合 \(A\) の特異点全体からなる集合を、特異点集合といって \(Sing(A)\) と書く.

\[A = V(f) = \{ (x, y) : x^3 - x^2y + y^4 = 0 \} \subseteq \mathbb{R}^2\] の上の \(P = (x, y) = 0\) は臨界点であって特異点である.

臨界点であることは計算すれば分かるが、上の定義では特異点であることの確認は明らかではない. 次の2つの定理が、非特異点の別な定義を与えてくれる.

逆関数の定理

\(U (\subseteq \mathbb{R}^d) \to \mathbb{R}^d\)\(C^r\)級 の 関数 \[f(x) = \left(f_1(x) ... f_d(x) \right)\]

について、これのヤコビ行列とは、 次のような \(d \times d\) 行列.

\[D\left( f(x) \right) = \left( \frac{\partial f_i}{\partial x_j}(x) \right)_{i,j}\]

行列 \(D(f(x_0))\) が逆行列をもつことと、 「点 \(x_0\) を含む開集合 \(V (\subset U)\) があって \(V\)\(f(V)\)\(C^r\) 級同型となる」ことは同値. すなわち、\(f\) が同型を与える写像になる. 加えて \(f\) が解析関数なら、解析同型を与えることになる.

陰関数定理

全てドメインを開集合 \(U \subseteq \mathbb{R}^d\) とする \(k\) 個の解析関数 \(f_1(x), f_2(x), \ldots, f_k(x)\) の解析的集合 \[A = \{ x \in U : f_1(x) = f_2(x) = \cdots = f_k(x) = 0 \}\] の中の点 \(x \in A\) で、次の \(k \times k\) 行列

\[E(x) = \left( \frac{\partial f_i}{\partial x_j}(x) \right)_{i,j}\]

の行列式が非ゼロなとき、 点 \(x\) は非特異点である.

これは、\(d - i\) 個の関数 \[f_i(x) = x_i ~ (k < i \leq d)\] を付け加えることで \(f = (f_1, f_2, \ldots, f_d)\) を構成でき、 逆関数の定理を適用することができて、\(f\)\(V, f(V)\) に解析同型を与える.

\(A \cap V\) の点 \(x_0\) では \(f_1(x_0) = ... f_k(x_0) = 0\) であるから \[f(x_0) = (0, \ldots, 0; x_{k+1}, \ldots, x_d) \in V\] これはまさに、点 \(x_0\) が非特異点であることを言っている.

解析関数 \(f\) の解析的集合の特異点は \(f\) の臨界点である. 対偶は「臨界点でないならば非特異点」であるが、こちらは陰関数定理から自明.

逆は一般には成立しない. 例えば \(V(x^2+y^2)\)\(0\) は臨界点であるが非特異点である.

特異点解消定理

定理3

解析関数 \(f: U (\subseteq \mathbb{R}^d) \to \mathbb{R}\) とのその解析的集合 \(A\) が空でないとき

  1. \(A \ne Sing(A)\)
  2. \(A \setminus Sing(A)\) の閉包は \(A\)
  3. \(A\) 中の任意の点が \(f\) の臨界点であることはあり得る

特異点解消定理 I

空間 \(R^d\) の代数的集合 \(X\) が与えられた時、 次の3つを満たす

が存在する

  1. \(X = g(Y)\)
  2. \(X \setminus Sing(X)\)\(g^{-1}(X \setminus Sing(X))\) は全単射で、その上でヤコビ行列は可逆
  3. \(g\) はプロパーである

特異点解消定理 II

定数関数ではない解析関数 \(f: R^d \to R\)\(f(0) = 0\) であるようなものが与えられたとき、

が存在して、

  1. \(g\) はプロパーである
  2. \(U_0 = \{x:f(x)=0\}\), \(W_0 = \{w:f(g(w))=0\}\) とするとき, 制限した \(g:(W \setminus W_0) \to (U \setminus U_0)\) が同型を与える
  3. \(W_0\) の任意の点を原点として局所座標 \((w_1 .. w_d)\) を導入することで \(f \circ g\) が次のように表現できること

が成立する.

\[f(g(w)) = S w_1^{k_1} \cdot w_2^{k_2} \cdot \cdots \cdot w_d^{k_d}\]

ここで \(S \in \{1, -1\}\)\(k_i\) は非負整数