Mar 18 2014

思い出してみても、
私は溢れ出る金貨の内、
控えめなものを一枚選んで失敬しただけなのだ。

しかし結局、
その時に同じ部屋にいた我々はみんな私と同じように
金貨を失敬し、処罰をうけた。

私は自分の親と学校の教師陣たちと向かい合うことになった。
しかし誰も私に叱るような言葉をかけるものはいなかった。
みんな優しく、がんばれよ、みたいな言葉をかけるだけだった。
私は意味が分からなかったが、担任の先生の言葉でようやく、事態をつかめた。

「xxxはちゃんと卒業するのよ」

もちろん、そのつもりだ、と答えた。

公立高校なら簡単に入れるようにこちらで手はずを整えることもできる、
とか言われた。
つまり、どうやら自分は今の学校を退学になったらしい。
それも入学取り消しである。退学と名乗ることもできない。
もうすぐ大学卒業、大学院進学も決まっていたというのに。

突然に私は高卒。

これには随分と参った。面白いとも思ったけれど。
母親は既に泣き疲れてるらしい。
ふだん吸わないタバコを薦められて吸っていた。

親と私とで話し合う場が設けられたが、何も話すことなんてない、と思った。
随分前から壊れてた私のメガネの話をしただけだった。
私は一人、散歩をすることにした。
階をあがると、犬の見せ合いっこに夢中の人間たちが道を塞ぐ散歩道。
今私が東大生だと知っている人だけが、
高卒になったあとも東大生だったと知ってくれてることになる。
東大生という肩書きに自分が随分もたれ掛かってたことを痛感する。
犬をじっと見てると、
自分の胸が随分大胆に鼓動を打っていることに気付いた。
これは興奮状態だろう。
ちょっと間違えて道を踏み外した。
あれはしょうがないことだったと思う。
そういう風に、道が出来ていたのだから。
運が悪かったと言うしかない。
また別の大学に入り直すのは本当に面倒臭い。
これからの道は3つあるけれど、あんまり真剣に考えるつもりはなかった。
私はただ、このドキドキを利用して、この手すりを乗り越えれば、
新しくリスタート出来るに違いない。
そう思うのだった。