Tue Jul 14 21:11:47 JST 2015

第一節

ほらあなたって、私と同じじゃない? わたし、嬉しいのよ。 自分とおんなじ趣味の人間にこうして会えて。

サエはそういわれて、内心むっとした。

二人はつい30分前に初めて会ったばかりであった。 といっても向こうはサエのことをもう少し前から知っていたようだけれど。

期待に外れて、喋れば喋るほど明らかになるのは、二人の趣味は不思議なほどに一致することだった。 それでも、油断はできないと、サエは思った。 なんせ向こうは私のSNSをずっと昔からチェックしていたようだし、 私の真似をして、 私になろうとしているのかも。 そういう、 かわいそうな、 人なのかも。

従ってサエのすべきことは、 自分のプライドのためにすべきことは、 所詮彼女の趣味は真似事であり、 技術は私に敵わないのだと思い知らせることだ。

第二節

結論から言えば、彼女の"コピー"は本物だった。 これについては何も弁明できなかった。 差異を見つけて説明できるようには思えなかった。 不思議なことに彼女の技術は私の技術を超えるものではなかった。 ちょうど私と同じくらいに始めて (いえ、もちろん、そんなわけはないのだけれど) 、私と同程度に練習をしてきたように思えた。

全く差異が無かったというわけではなかった。 もちろんであるが。 しかし、それも、有り得そうな違いであって、 返って、 彼女と私が本当に同程度なのだということを裏付けるだけに思え、 指摘するのをやめた。