Thu Nov 26 09:01:41 JST 2015

3週間前から一昨日の日記

外食をできるだけ減らして自炊をするようになったが、 それで食費が浮いた分、お酒を外で飲むようになったので節約になってるかどうか分からない. すぐ近所に立って飲むお店があって、食べ物も安いので気まぐれに寄っている. 自分はあまりにも不規則な生活をしていて、 逆に他人とは、なんと規則的に動くのだろうと不思議に思う. ある曜日に行くと必ずいるおじさんがいる. 名前は互いに知らないが、嫌でも顔見知りになった. 言うまでもなく、先に話しかけてきたのは向こうで、私はいつも質問される一方だ. 私がどこどこの大学に通ってることを言うと、 たくさん本を読んだろう、だとか、 それくらいになると勉強が好きなんだなあ、だとか、 言われ慣れてきたことを一通り言われて、うんざりした. それから、思い出したようにおじさんは、 活字中毒って知ってるか? と聞いてきた. 私が、本を読むのが大好きな人のことでしょうと答えると、

「いやいや、そんなんじゃない. ちょっと本が好きなんてもんじゃない. 文字通り中毒で、一度活字を目にしたら、全て読み切るまで目が離せないのだ」

そのおじさんは、独自解釈の活字中毒というものを知ってるらしい. 本を読むと、表紙の題字から裏のバーコードの数字まで、一度全部目を通さないと気が済まないので、 時間を無駄にするので本を決して近くに置かないという. そのくらいなら自分でどうにかできるからいいが、 街を歩いていて偶然目に文字が入るとそれも読んでしまうという. おじさんの話では、その人は、 車道のど真ん中にある道路標識が目に入り、 それが文字が多すぎて、読み込む余り、車道に飛び出してしまったらしい.

その時は面白く聞いていたが (酔っていたし) 、しかし何だか新作落語のオチみたいによくできた話で、 嘘臭く思えてきた.

それから、次におじさんに会ったのは、 つまり、次にその曜日にお店に行ったのが、それから3週間後で、一昨日だった. おじさんの右隣には別のおじさんが座っていて (こちらのおじさんは、左のおじさんとは反対に静かそうな人間だ) 私が店に入ったのを見ると、いつものニコニコ顔を (ニヤニヤ顔を) 私に向けて、 手をちょいちょいと振って隣の席に私を招いた. 右のおじさんは私を一瞥して会釈をした. 先日の話で、活字中毒は死んだとはっきり言ったくせに (もしかして言ってなかったのかな) その人が活字中毒のおじさんだという. おじさんはメニューをちらと見てイワシの煮付けを注文した. わたしはそれを見ておやと思った. 先日の話では、活字中毒は、過去に一度読んだものであっても、 再び目にすると、それをじっくりまた、頭から末尾まで、読み通さないと気がすまないのだとか. 私が、もしかして、活字中毒を克服されたのですか、と聞くと、 笑って答えた. 全く克服というのはできていない、しかし和らげる方法を思いついた. 読むよりまず先に、絵として見る. これを記憶すれば、目をつむって、頭の中で再現し、それからじっくり読むことができる. これで少なくとも、人から変に思われることはない. 読んでる時というのは、顔を文字に近づけて狂乱したように読むので、人がみれば異常者だと言う. そうそう、例えばこのメニューは、白い紙に黒い文字だが、頭で再現すると、何故か、 色が反転して、黒に白になるんだ. 慣れるまでは、記憶した絵を頭に再現するのに、目をつむる必要があったが、 これは訓練すれば、目を開けたままでも思い出せるようになった. これで、外を歩きながらでも文字を読めるようになった. しかも、絵を思い出してる間は、視界に文字が入っても気づかないので、都合が良いという. 絵を記憶するというのが信じられないので、 お店のメニューの、何行目何文字目が何の文字であるかクイズを出して遊んだ.