2016-12-24 (Sat.)
\(n\) 変数関数 \(f(x_1, \ldots, x_n): \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}\) の \(x_i\) による偏微分を \[\frac{\partial f}{\partial x_i}\] や \[f_{x_i}\] と書く.
繰り返し偏微分を適用することで \(f_{x_i x_j}\) を得るが、一般に適用の順序に関わらず \[f_{x_i x_j} = f_{x_j x_i}\] が成立する.
\(\Delta\) を \(n\) 変数関数 \(f\) から次を導く演算子と定義しラプラシアンと呼ぶ.
\[\Delta f = \sum_i \frac{\partial^2 f}{\partial x_i^2}\]
\(\Delta f=0\) を満たす \(f\) を調和関数と呼ぶ.
三変数関数 \(r(x,y,z) = \sqrt{x^2+y^2+z^2}\) の逆数 \(f(x,y,z) = r^{-1}\) は \((x,y,z)=0\) を除いて調和関数.
\(D\) を 多変数関数 \(f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m\) の微分を導く演算子と定義し、 \(f\) の微分を \(Df\) ははヤコビ行列と呼ばれる次の行列.
\[(Df)_{i j} = \frac{\partial f_i}{\partial x_j}\]
ここで \(f_i\) は \(f(x)\) の第 \(i\) 成分に写す関数 (\(\mathbb{R}^n \to \mathbb{R}\)). \(n=m\) のとき、ヤコビ行列の行列式をヤコビアンと言う.
関数 \(f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m\) で \(n>m\) とする. ある点 \(a \in \mathbb{R}^n\) で \(f(a) = 0\) かつ \(\text{rank} Df(a)=m\) が成り立つとき、次の定理が成り立つ.
次の2つの関数を適切に設定することができる:
このように定まる \(h\) を \(f\) の 陰関数 という.
\(U \subseteq \mathbb{R}^n\) 上で定義された関数 \(f: U \to \mathbb{R}\) の \(\text{grad}\) とは
\[\text{grad}~f = \nabla f = \left( \frac{\partial f}{\partial x_1},~ \frac{\partial f}{\partial x_2},~ \ldots,~ \frac{\partial f}{\partial x_n} \right).\]
\(U\) 上で定義された \(n\) 個の関数 \(u_i: U \to \mathbb{R}\) (\(i=1,2,\ldots,n\)) を並べたものをベクトル場 \(X = (u_1, u_2, \ldots, u_n)\) という.
ベクトル場 \(X\) に対する演算子 \(\text{div}\) 及び \(\text{rot}\) を定める.
\[\text{div}~X = \nabla \cdot X = \sum_i \frac{\partial u_i}{\partial x_i}\]
\[\text{rot}~X = \nabla \times X\]
\(n=3\) のとき
\[\text{rot}~X = \left( \frac{\partial u_3}{\partial x_2} - \frac{\partial u_2}{\partial x_3},~ \frac{\partial u_1}{\partial x_3} - \frac{\partial u_3}{\partial x_1},~ \frac{\partial u_2}{\partial x_1} - \frac{\partial u_1}{\partial x_2} \right)\]
開集合 \(U\) 上で定義される関数 \(f\) と \(U\) 上の経路 \(C\) があるとき、 \(f\) の \(C\) に沿う線積分 \(\int_C f ds\) が定められる. \(U\) に座標 (\(x_1, \ldots, x_n\)) を導入することで、 \(\int_C f dx_i\) も定義できる. これを更に組合せて (線型結合して) 任意の方向に積分したい.
すなわち、\(U \to \mathbb{R}\) な関数 \(f_1, \ldots, f_n\) を用いて
\[\omega = f_1 dx_1 + \cdots + f_n dx_n\]
で積分をしたい. この \(\omega\) を 微分式 という. 関数 \(f_i\) 全てが \(C^r\) 級のときに \(\omega\) は \(C^r\) 級であるという.
N.B. 微分式を更に一般化して高次元化したのを 微分形式 という. つまり微分式とは一次の微分形式.
関数 \(F: U \to \mathbb{R}\) に対して
\[dF = \sum_i F_{x_i} dx_i\]
を \(F\) の 全微分 という.
\(U\) 上で定められてる関数 \(F\) と、\(U\) 上の経路 \(C:P \to Q\).
\[\int_C dF = F(Q) - F(P)\]
が成立する.
\(\mathbb{R}^n\) 上の単純閉曲線 \(C\) について \[\int_C dF = 0.\]
\(F(x,y)=xy\) を代入することで次を得る.
\(\mathbb{R}^2\) 上の単純閉曲線 \(C\) について \[\int_C x dy = - \int_C y dx.\]
\(\mathbb{R}^2\) 上の単純閉曲線 \(C\) について、 囲まれる領域を \(D\) とする. \(D\) の面積を \(\text{Area}~D\) とすると次が成立する.
\[\int_C y dx = -\text{Area}~D.\]
先ほどの系から \(\int_C x dy = \text{Area}~D\) もすぐに得られる. これらを組合せて \(\text{Area}~D = \frac{1}{2} \int_C xdy - ydx\) という書き方も出来る.
\(\mathbb{R}^2\) 上の単純閉曲線 \(C\) とそれに囲まれる領域を \(D\) とする.
(*) 便宜上 \(C\) と \(D\) を以下のような単純な図形だとする. すなわち2つの関数 \(\phi^+(x)\) と \(\phi^-(x)\) があって
\(C\) を上と下とに分解できるような、形を仮定すると、
\[\iint_D \frac{\partial f}{\partial y} dx dy = \int_a^b dx \int_{\phi^-(x)}^{\phi^+(x)} \frac{\partial f}{\partial y} dy = \int_a^b dx f(x, \phi^+(x)) - f(x, \phi^+(x)) = - \int_C f dx.\]
同様にして
\[\iint_D \frac{\partial g}{\partial x} dx dy = \int_C g dy.\]
この和の式
\[\iint_D \left( -\frac{\partial f}{\partial x} + \frac{\partial g}{\partial x} \right) dx dy = \int_C f dx + g dy\]
を グリーンの定理 と呼び、実は (*) に関わらずに成立する. 公式は和の形であるが \((f,g)=(f,0)\) などとすることで、項ごとに等しいことは分かる.
ある微分式 (1次の微分形式) \(\omega\) に対してある関数 \(F\) によって \(\omega = dF\) が成り立つとき、 \(\omega\) は 完全 であるという.
今 \(\omega = \sum f_i dx_i\) が完全で \(\omega = dF\) だとする. このとき明らかに
\[f_i = F_{x_i}\]
が成立している.
\[\frac{\partial f_i}{\partial x_j} = F_{x_i x_j} = \frac{\partial f_j}{\partial x_i}\]
が導かれる.
\(\omega = \sum f_i dx_i\) について \(\frac{\partial f_i}{\partial x_j} = \frac{\partial f_j}{\partial x_i}\) となる性質を 閉じている という.
今の説明から、微分式が完全ならばそれは閉じている.
\(\mathbb{R}^n\) 全体で定義された \(C^1\) 級の微分式 \(\omega\) について、完全であることと閉じてることは同値.
ベクトル場 \(X = (u_1, \ldots, u_n)\) について \(\text{rot}~X=0\) とする. \(\omega = \sum u_i dx_i\) とすると、rot が0 な条件はちょうど \(\omega\) が閉じた微分形式であることを言っている. 定理 4.4 から \(\omega\) は完全である.
すなわち、ある関数 \(f\) が存在して \(\omega = df = \sum f_{x_i} dx_i\). 故に \(u_i = f{x_i}\).
\(\text{grad}~f = (f_{x_1}, \ldots, f_{x_n}) = X\).
二次元領域 \(A \subset \mathbb{R}^2\) 上で関数 \(f: A \to \mathbb{R}\) が積分可能だとする (\(\iint_A fdxdy\)). 一対一の写像 \(g\) を以って、ある二次元領域 \(A'\) を \(A=g(A')\) と写せるとする. このとき、 \(f \circ g\) は \(A'\) 上で積分可能で、しかも次が成り立つ.
\[\iint_A f dx dy = \iint_{A'} f \circ g ~ |\text{det}(Dg)| du dv\]
ここで \(\text{det}(Dg)\) は \(g\) の微分の行列式.
曲面とは点集合 \(S \subset \mathbb{R}^3\) であって、 任意の点 \(P \in S\) に対してその近傍 \(U_P\) で次を満たすような関数 \(F: U_P \to \mathbb{R}\) が存在するようなもののこと.
すなわち、\(F\) は \(P\) の近傍で曲面を表現するような方程式に相当する. 点 \(P(a,b,c)\) における接平面は方程式:
\[F_x(P) (x-a) + F_y(P) (y-b) + F_z(P) (z-c) = 0\]
で表される. 局所的に曲面はこの接平面で近似できる. \(F_z(P) \ne 0\) とすると、この接平面の方程式から \(z\) は \(x, y\) で表現されることがわかる. つまり局所的には二変数関数のグラフである.
曲面 \(S\) を有限個の領域 \((\sigma_i)_i\) に分割する. \(\sigma_i\) に属する適当な点での接平面に \(\sigma_i\) を射影したときに出来る領域を \(\tau_i\) とする. \(\sigma_i\) の面積 \(\text{Area}~\sigma_i\) を \(\text{Area}~\tau_i\) で定める. \(S\) の面積を \(\sigma_i\) の面積の和の極限で定義する.
\[\text{Area}~S = \lim_{|\sigma| \to 0} \sum_i \text{Area}~\sigma_i.\]
\(z = f(x, y)\) で表示されるグラフ \(\Gamma_f\) を曲面だと見做すことができる.
\[\Gamma_f = \{ (x,y, f(x,y)) : (x,y) \in A \}.\]
\(A\) は \(f\) が定義された適当な領域.
点 \(P(a,b,c) \in \Gamma_f\) での接平面 \(T_P\) は \(z-c = f_x(x-a) + f_y(y-b)\) で表される. 従って \(P\) での法線ベクトルは
\[\vec{n} = (-f_x, -f_y, 1)\]
\(\vec{n}\) と \(z\)軸との偏角 \(\theta\) を計算すると \(\cos \theta = 1 / \sqrt{1 + f_x^2 + f_y^2}\). というわけで、\(\Gamma_f\) 上の微小区間 \(\sigma\) を接平面に射影して \(\tau\) が出来て、 それをさらに \(xy\) 平面に射影して出来たのが \(\tau'\) だとすると、
\[\text{Area}~\sigma = \text{Area}~\tau = \frac{1}{\cos \theta} \text{Area}~\tau'\]
というわけで、
\[\text{Area}~\Gamma_f = \iint \sqrt{1 + f_x^2 + f_y^2}~dx dy\]
三次元空間上の曲面は少なくとも局所的には二次元パラメータで表示できる. 即ち \((x,y,z) \in S \subset \mathbb{R}^3\) を \((u, v)\) でパラメータ表示する.
ただし \((u, v)\) がちゃんと座標になるために次を仮定する.
\[rank \left( \begin{array}\\x_u && y_u && z_u \\ x_v && y_v && z_v\end{array}\right) = 2\]
これは点 \(P(x,y,z)\) への位置ベクトル \(t = (x,y,z)\) での曲面に関する2つの接ベクトル \(t_u, t_v\) が独立であることを言う.
N.B. \(t_u, t_v\) が本当に接ベクトルか?
点 \(P(x,y,z)\) が \(t = (x, y, z) = (x(u,v), \ldots)\) で表現できる. この周辺の点は \(t' = t + \delta t = (x(u+ \delta u, v+ \delta v), \ldots)\) である. これをつなぐベクトル \(\delta t = t' - t\) が、\(\delta u, \delta v\) の極限を取ったときに、 「曲面の点Pにおける接ベクトル」になる. \(\delta v=0\) で固定して \(\delta u\) だけの極限を考えると、 \(\delta t = (x(u + \delta u, v) - x(u, v), \ldots) = \delta u (x_u, y_u, z_u)\). \(t_u = \delta t / \delta u = (x_u, y_u, z_u)\) もまた接ベクトルであることは分かる.
この座標を使った曲面積は変数変換の公式を使って次のように書ける.
\[\text{Area}~S = \iint \sqrt{1 + z_x^2 + z_y^2}~|x_u y_v - x_v y_u| du dv\]
\((x,y,z) = t(u,v)\) での法線ベクトルの表現を考える. \(z = z(x,y)\) で表現できるとき、法線ベクトルは \(x,y,z\) だけで表現できる. 即ち
\[n = (z_x, z_y, -1)\]
である. 一方で \(t_u, t_v\) が接ベクトルであるから、この外積も法線ベクトルである. 大きさは分からないので適当なスカラー値 \(c\) を以って \[n = c (t_u \times t_v) = c \left[ y_u z_v - y_v z_u, \ldots \right]\]
この関係を用いると、先ほどの面積の公式は更に簡単に書けて
\[\text{Area}~S = \iint | t_u \times t_v | du dv.\]
さらに
と置くと \[\text{Area}~S = \iint \sqrt{EG -F^2}~du dv.\]
曲面 \(S\) 上の各点の法線を考えると、面より上方向か下方向かで二通り考えることができる. そこで具体的に正の向きまたは負の向きのいずれかを与える. ただしある点の向きとその周辺の点の向きは一致していなければならないものとする.
例えば、球において北極点で上向きを与えると、南極点では下向きになる. 例えばメビウスの帯を考えるとある点で上向きを与え、一周するように向きを与えていくと、元の点に戻って下向きになる. これは向きの与え方に矛盾する. このように向きを与えられない「向きつけ不能な」曲面も存在する.
ただし本文書で出てくる曲面はすべて向き付け可能を仮定する.
\(\mathbb{R}^3\) 上の曲面 \(S\) (境界を持つことを許す) の上で定義された実関数 \[f: S \to \mathbb{R}\] があるとする. これの \(S\) 上の積分を考える.
\(S\) を有限個の区間 \((\sigma_i)_i\) に分割する. また各区間 \(\sigma_i\) からそれに属する点を選び \((P_i)_i\) を作っておく.
\[\sum_i f(P_i) \text{Area}\sigma_i\]
の値が \(\sigma_i\) の直径の極限を取った時に値を定めるなら、その値を積分値 \[\int_S f d\sigma\] と定義する.
次に \(xy\) 平面に関する \(f\) の積分を定義する. 先ほどの区間 \(\sigma_i\) を \(xy\) 平面にそのまま正射影してできる区間を \(\sigma_i'\) とする. \[\sum_i f(P_i) \text{Area}\sigma_i'\] この収束値を \[\iint_S f dx dy\] と定める. ただし \(\text{Area}\sigma_i'\) は向き付きの面積とする. すなわち、曲面 \(S\) 上の点 \(P_i\) の向きをそのまま正射影してきて、正の向きなら正の面積、 負の向きなら負の面積とする.
グリーンの定理は二次元上の閉曲線に関する定理だった. これを三次元上の閉曲面の場合に一般化したものがガウスの定理.
閉曲面 \(S\) とそれに囲まれた領域を \(D\) とする. \(f, g, h\) を \(D\) を含む領域で定義された実関数とする.
\[\iint_S f~dy dz + g~dz dx + h~dx dy = \iiint_D \left( \frac{\partial f}{\partial x} + \frac{\partial g}{\partial y} + \frac{\partial h}{\partial z} \right) dx dy dz\]
両辺とも3項の和になっているがそれぞれが等しいことを言っていることは、例えば \((f,g,h)=(f,0,0)\) などとすることですぐ分かる.
ベクトル場 \(X = (f, g, h)\) を考える.
\[\text{div}~X = \frac{\partial f}{\partial x} + \frac{\partial g}{\partial y} + \frac{\partial h}{\partial z}\]
曲面 \(S\) 上の点 \(x\) における法線ベクトルを \(\vec{n} = (\cos \alpha, \cos \beta, \cos \gamma)\) とすると \[X \cdot \vec{n} = f \cos \alpha + g \cos \beta + h \cos \gamma\]
\(S\) 上の区間 \(\sigma\) の正射影を考えると
以上を用いると、ガウスの定理を次のように書きなおすことができる:
\[\int_S X \cdot \vec{n} ~ d\sigma = \iiint_D \text{div}~X~dx dy dz.\]
「領域内の発散の和は、表面上の積分に等しい」と読める.
曲面 \(S\) 上の位置ベクトル \(r = (x,y,z)\) とそこでの法線ベクトルを \(n=n(x,y,z)\) とする.
\(r, n\) の成す角を \(\theta\) とすれば \(r \cdot n = |r| \cos \theta\).
\[\text{grad}~\frac{1}{|r|} = - \frac{\cos \theta}{|r|^2}\]
両辺の面積分を考えると、ガウスの定理から
\[\int_S \frac{\cos \theta}{|r|^2} = - \iiint_D \text{div grad } \frac{1}{|r|} dxdydz\]
関数 \(\text{div grad }1/|r| = \nabla^2 1/|r|\) は \(r = 0\) を除いて \(0\) になるので、 領域 \(D\) に原点が含まれていなければ、
\[\int_S \frac{\cos \theta}{|r|^2} = 0\] が得られる.
原点を含む場合、次のようにして積分値が求まる. \(S\) より内側で原点を中心とする球面 \(S_r\) を考える. 半径 \(r\) を十分小さくすればそのような球は存在する. \(S = (S - S_r) + S_r\). \((S-S_r)\) 上では積分値はゼロ. 従って、\(\int_S \cdots = \int_{S_r} \cdots\).
\[\int_{S_r} \frac{\cos \theta}{|r|^2} = \int_{S_r} \frac{1}{r^2} = 4\pi.\]
領域 \(D\) を原点 \(O\) から見た場合の立体角を次のように定める.
\(O\) を中心として半径 \(r\) の適当な球面 \(S_r\) を考える. \(O\) から \(D\) を見たときに \(S_r\) 上に掛かる領域は \(S = \{S_r \text{ と } OP \text{ との交点 } : P \in D\}\)
立体角は \[4 \pi \frac{\text{Area }S}{\text{Area }S_r}.\]
特に \(r=1\) とすると \(\text{Area }S\) そのものが立体角.
グリーンの定理は二次元上の閉曲線に関する定理だったが、これを三次元上の閉曲線に一般化する (ガウスの定理とは違う方向への一般化である).
三次元上の境界を持つ閉曲面 \(S\) とその境界 \(C = \partial S\).
例えば、\(S = \{(x,y,z) : x^2+y^2+z^2=r^2, z \geq 0\}\), \(C = \{(x,y,z) : x^2+y^2+z^2=r^2, z=0\}\).
\(f,g,h\) を \(S\) を含む領域の上で定義された実関数とする. この時、次が成立する:
\[\int_C f dx + g dy + h dz = \iint_S (h_y-g_z) dy dz + (f_z-h_x)dz dx + (g_x-f_y) dx dy.\]
グリーンの定理やガウスの定理と同様に、例えば \((f,g,h)=(f,0,0)\) を代入することで \[\int_C f dx = \iint_S f_z dz dx -f_y dx dy\] を得る.
ベクトル場 \(Y = (f,g,h)\) とし \(S\) 上の点での法線ベクトル \(n\), \(C\) 上 (向きを与えて) の点での接ベクトル \(t\) とする.
ストークスの定理はこれらを用いて次のように書き改められる:
\[\int_S \text{rot}~Y \cdot \vec{n} ~ d\sigma = \int_C Y \cdot \vec{t} ~ ds.\]
曲面 \(S \subset \mathbb{R}^3\) 上の点 \((x, y, z)\) が二次元の局所座標 \((u, v)\) で表示されるとする. 位置ベクトル \(t = t(x, y, z)\) を \(u, v\) で偏微分して得られるベクトル \(t_u, t_v\) が点 \((x,y,z)\) における2つの異なる接ベクトルであることは先に述べた. 従って任意の接ベクトルは2つの実数 \(\alpha, \beta\) で以って
\[x = \alpha t_u + \beta t_v\]
で表現できる. このベクトルの大きさは
\[|x|^2 = \alpha^2 \langle t_u, t_u \rangle + 2 \alpha \beta \langle t_u, t_v \rangle +\beta^2 \langle t_v, t_v \rangle\]
と計算できる. (ただし \(\langle \cdot, \cdot \rangle\) はベクトルの内積.)
ここで
とおく.
この右辺を \((u,v)\) に関する 第一基本形式 \(f_I(\alpha, \beta)\) という.
また \(EG-F^2\) を第一基本形式の行列式という.
曲面 \(S\) 上の曲線 \(C\) に対応する平面 \((u, v)\) 上の曲線を \(C'\) とする. 今パラメータ \(s:s_0 \to s_1\) で \(C'\) が説明されるとする. すなわち
\(C\) 上の点の位置ベクトル \(t = t(u, v) = (x(u,v), y(u,v), z(u,v))\) の \(s\) による微分
\[\frac{dt}{ds} = t_u u_s + t_v v_s\]
を見ると、まさにちょうど接ベクトル \(x=\alpha t_u + \beta t_v\) の形をしてて、 \(|dt/ds|\) の大きさは
\[\left| \frac{dt}{ds} \right| = f_I(u_s, v_s).\]
従って、これを \(s\) について積分することで、\(C\) の長さは
\[\ell(C) = \int_{s_0}^{s_1} \sqrt{E u_s^2 + 2F u_s v_s + G v_s}~ds.\]
曲面の曲がり具合を調べることを目的とする. 具体的には次のように調べる. 曲面上のある点 \(P(x_0,y_0,z_0) = t(u_0, v_0)\) に接平面 \(T_P\) を引く. \(P\) の周辺で点 \((x,y,z) = t(u,v)\) と \(T_P\) との距離 \(h\) の挙動を調べる. ただし、接平面よりこちら側にある点への距離を正、 あちら側にある点への距離を負と定義する.
例えば、\(P\) からどの方向に動いても \(h\) が増加するなら、それは球面のような凸の形をしてることがわかる. このために正負の定義が必要である.
まず明らかなこととして、点 \(P\) での距離はゼロである. すなわち \(h(P) = 0\). それから、接するという条件から、一階の微分もゼロである. すなわち \(h_x(P) = h_y(P) = h_z(P)=0\).
もう少し \(h\) を陽に計算してみる. 点 \((x,y,z)\) での \(h\) は、\(P\) からのベクトルと、\(P\) での法線ベクトル \(\vec{n_P}\) との内積をとれば求められる. 距離の正負はこの法線ベクトルの方向で決まる. ちょうど次の式で \(h\) が求まる.
\[h(u,v) = h(x,y,z) = \vec{n_P} \cdot (x - x_0, y - y_0, z - z_0)\]
点 \((u_0, v_0)\) の周りで二階までのテイラー展開をすると、一階まではゼロなので、
\[h(u,v) \sim \frac{1}{2} \left[ h_{uu}(u_0, v_0) (u - u_0)^2 + 2 h_{uv}(u_0, v_0) (u - u_0) (v-v_0) + h_{vv}(u_0, v_0) (v - v_0)^2 \right]\]
ここで
とおくと、 \[h(u,v) \sim \frac{1}{2} \left[ L (u - u_0)^2 + 2 M (u - u_0) (v-v_0) + N (v - v_0)^2 \right]\]
中の式を平方完成すると、\(Q=Lu^2+2Muv+Nv^2 = L \left[ (u+\frac{M}{L}v)^2 + \frac{LN-M^2}{L}v^2 \right]\).
i. \(LN-M^2>0\) のとき、\(Q=L(X^2+Y^2)\) で凸の形になってる.
ii. \(<0\) のとき、\(Q=L(X^2-Y^2)\) で、鞍の形になってる.
iii. \(=0\) のとき、\(Q=LX^2\).
点 \(P\) を固定せずに曲面上で自由に取るものとして、
\[f_{I\!I}(\alpha, \beta) = L \alpha^2 + 2M \alpha \beta + N \beta^2 = \left( \begin{array}\\ \alpha & \beta \end{array} \right) \left( \begin{array}\\ L & M \\ M & N \end{array} \right) \left( \begin{array}\\ \alpha \\ \beta \end{array} \right)\]
これを 第二基本形式 という. また \(LN-M^2\) を第二基本形式の行列式という.
関数 \(h\) はコレ以降登場しないので \(L,M,N\) を別な表現で定義しておく.
ここで点\(P\)を固定するのをやめて
と定める. \(\vec{n}\) と \(t_u\) とが直交するから \(\vec{n} \cdot t_u = 0\). 両辺微分して \(\vec{n}_u \cdot t_u + \vec{n} \cdot t_{uu} = 0\). 従って、
同様に
\(L,M,N\) はコレ以降、こういうものとする.
曲面 \(S\) 上にある経路 \(C\) 上の点 \(P\) における曲率を定める.
経路 \(C\) 上の点を、始点からの距離 \(s\) でパラメータ表示する. 即ち、
特に二式目から \(t' \cdot t' = 1\). 両辺を微分して \(2 t' \cdot t'' = 0\) を得る. 即ち、「速度ベクトル」 \(t'\) と「加速度ベクトル」 \(t''\) とが直交することが確認できる.
ベクトル \(t''\) を、曲面の法線方向 (\(n\)) と、接面方向 (\(g\)) とに分解する:
\[t'' = \kappa_g + \kappa_n.\]
ちょうど、\(t'', \kappa_g, \kappa_n\) が \(\mathbb{R}^3\) の直交基底を成す. この \(\kappa_n\) を法曲率ベクトル、その大きさを 法曲率 という. 法曲率は、\(t''\) と法線ベクトル \(\vec{n}\) の内積を取れば求まって
\[|\kappa_n| = t'' \cdot \vec{n}.\]
\(t'\) と \(\vec{n}\) が直交するから \(t' \cdot \vec{n} = 0\). 微分して \(t'' \cdot \vec{n} + t' \cdot \vec{n}' = 0\). これを用いて
\[|\kappa_n| = - t' \cdot \vec{n}'.\]
を用いて更に展開すると
\[|\kappa_n| = L \left(\frac{du}{ds}\right)^2 + 2M \frac{du}{ds} \frac{dv}{ds} + N \left(\frac{dv}{ds}\right)^2\]
改めて \(f_{I\!I}\) と照らし合わせると、 \(t' = (du/ds) t_u + (dv/ds) t_v\) に対して、
\[|\kappa_n| = f_{I\!I} \left( \frac{du}{ds}, \frac{dv}{ds} \right).\]
即ち、法曲率は接ベクトル \(t'\) から定まる.
第一基本形式が接ベクトルの長さ (の自乗) だったことを思い出すと、 今 \(|t'| = 1\) だったので
\[1 = |t'| = f_{I} \left( \frac{du}{ds}, \frac{dv}{ds} \right).\]
以上は経路 (曲線) の上の (法) 曲率である. 今から曲線の曲率を考えたい. 経路 \(C\) を、点 \(P(x,y,z)\) を通る制約で自由に取ったとき、曲率がどう変化するかを見たい. 変化のその見方の一つとして、最大値と最小値を調べるというのがある. 最大値・最小値をペアで 主曲率 という.
主曲率を特にはこう書ける. 点 \(P\) における接ベクトルは一般に
\[x = \alpha t_u + \beta t_v\]
と書けて、
\[f_I(\alpha, \beta) = 1\]
の制約の元で
\[f_{I\!I}(\alpha, \beta)\]
の最小、最大を調べる. ところで接ベクトルの大きさを \(r\) 倍すると (\((\alpha, \beta) \mapsto (r\alpha, r\beta)\)) \(f_I\) は \(r^2\) 倍になる (そもそも長さの自乗であった). \(f_{I\!I}\) もまた \(r^2\) 倍になる. そういうわけで、
\[\lambda = \frac{f_{I\!I}(\alpha, \beta)}{f_I(\alpha, \beta)}\]
という比を使うと制約が取っ払える. この値の最大最小を求めれば良い.
解き方としては \(\alpha, \beta\) 各々で偏微分したときに \(=0\) となる式を解く. 結果のみ述べると、
\[(EG-F) \lambda^2 - (EN-GL-2FM)\lambda - (LN-M^2) = 0\]
の解がそれになる. それぞれを \(\lambda_1, \lambda_2\) として、これが先に述べた、主曲率である.
これらの積をガウス曲率という. 解と係数の関係からそれはすぐに求まって
\[K = \frac{LN-M^2}{EG-F^2}\]
となる. これはただ \(t'(s)\) のみに依存するので \((u, v)\) 及び \(t(u,v)\) には依存しない.
「ガウス曲率は局所座標のとり方に依らない」
与えられた曲面 \(S\) に対して定めるガウス写像とは、 \(S\) 上の点を球面上の点に写す関数
\[\gamma: S \to S^2\]
として説明される. 具体的には、\(S\) 上の点 \(P\) における法線が \(\vec{n_P}\) (大きさは 1 に正規化する) のとき、 この法線ベクトルを単に座標だと見なして、\(P\) を \(n_P\) に写す.
\[\gamma(P) = n_P.\]
自然に領域に関するガウス写像を
\[\gamma(S) = \{ \gamma(P) : P \in S\}\]
と定める.
曲面 \(S\) 上のある点を \(P\) とする. \(P\) を含む微小な領域を \(\sigma\) とする. このとき、\(P\) でのガウス曲率は次で求まる.
\[K(P) = \lim_{|\sigma| \to 0} \frac{\text{"Area" }\gamma(\sigma)}{\text{Area }\sigma}\]
ただしここで、分母の \(\text{Area}\) は符号なし (非負) で、分子の \(\text{"Area"}\) は符号つきの面積だとする. \(\sigma\) における曲面の向きを \(\gamma\) が逆に写すとき、符号がマイナスになると考える.
法線 \(\vec{n}\) の大きさを 1 に制約したので \(n \cdot n = 1\). 両辺を \(u,v\) で偏微分することで
を得る. 即ち、 \(n_u, n_v\) もまた、\(n\) と直交する接ベクトルであることが分かる. \(t_u, t_v\) が一次独立な接ベクトルだったので、 適当な係数 \(A,B,C,D\) を用いて
と書ける. \(A,B,C,D\) は \(E,F,G\)、\(L,M,N\) を用いると解ける.
みたいな立式で云々すると
\[n_u = \frac{FM-GL}{EG-F^2} t_u + \frac{FL-EM}{EG-F^2} t_v\] \[n_v = \frac{FN-GM}{EG-F^2} t_u + \frac{FM-EN}{EG-F^2} t_v\]
を得る.
さて、曲面 \(S\) の上で2つのベクトル \((t_u, t_v)\) は微小な矩形領域を作るが、 その面積は \(t_u \times t_v\) で、 そしてガウス写像は球面上の \((n_u, n_v)\) が作る微小な矩形領域に写す.
2式目に先ほどの結果を代入すると、
\[\text{Area }\gamma(\sigma) = \frac{LN-M^2}{EG-F^2}~|t_u \times t_v| = K(P)~|t_u \times t_v|\]
というわけで先の定理を得る.
例として、半径 \(r\) の球面 \(S_r\) のガウス曲率を調べてみる. 厳密な計算をしなくても、\(S_r\) 上の微小領域はガウス写像によって、半径 1 の球面上の、同じ立体角を持つ領域に写されつことは想像ができる. と考えると、ガウス曲率は面積の比であるから、 いたる点 \(P\) で
\[K(P) = \frac{1}{r^2}\]
厳密に計算すると、元の球面は \(x^2+y^2+z^2-r^2=0\) だから grad を取れば、 \(t=(x,y,z)\) における法線ベクトルは \(n = \frac{1}{r} t\). 従って \(n_u = t_u/r\)、 \(n_v = t_v/r\) となって面積の比は \(1/r^2\).
球面という曲面は、どの点でもガウス曲率が等しい. このような曲面を 定曲率 (constant curvature) 曲面 という.
平面も定曲率で
\[K(P) = 0.\]
第 \(k\) 微分形式 (\(k=0,1,2,\ldots\)) を総称して微分形式と呼ぶ. 第 \(k\) 微分形式とは、式の集合である.
第 \(0\) 微分形式とは定義域を \(U\) (ある開集合)、 値域 \(\mathbb{R}\) とし、無限回微分可能な関数全体のことで \(A^0(U)\) と書く.
\[A^0(U) = C^\infty(U \to \mathbb{R})\]
今簡単に、\(U=\mathbb{R}^2 \ni (x,y)\) とする.
第 \(1\) 微分形式とは 変数 \(x,y\) に対応した \(dx,dy\) を用いて
\[A^1(\mathbb{R}^2) = \{ f~dx + g~dy ~:~ f,g \in A^0(\mathbb{R}^2) \}\]
第 \(2\) 微分形式とは
\[A^2(\mathbb{R}^2) = \{ f~dx~dy ~:~ f \in A^0(\mathbb{R}^2) \}\]
\(k \geq 3\) に関しては \[A^k(\mathbb{R}^2) = \{\}\]
次により一般に \(U=\mathbb{R}^n \ni (x_1, x_2, \ldots, x_n)\) の場合. \(dx_1, dx_2, \ldots, dx_n\) という記号を用いて、
\[A^k(\mathbb{R}^k) = \left\{ \sum_{i_1 < i_2 < \cdots < i_k} f_{i_1,i_2,\ldots,i_k} dx_{i_1} dx_{i_2} ~\cdots~ dx_{i_k} : f_{i_1,i_2,\ldots,i_k} \in A^0(\mathbb{R}^n) \right\}\]
また例外的に、 第 \(-1\) 微分形式とは適当な単集合 (singleton)
\[A^{-1}(U) = \{0\}\]
だとする.
以降 \(U=\mathbb{R}^n\) とする.
\(A^k(U)\) から \(A^{k+1}(U)\) を導く関数 \(d\) を定義する. \(d\) という操作を外微分という.
再帰的に \(d\) を定義する.
いわゆる全微分で定義する.
\[d(f) = f_{x_1} dx_1 + f_{x_2} dx_2 + \cdots + f_{x_n} dx_n\]
ここで \(f_{x_i}\) は \(f\) の \(x_i\) による偏微分導関数.
また、 \(f(x,y,z)=x\) などを考えると、 記号 \(dx\) と \(d(x)\) とを区別する必要がないことが分かる.
3つの公理を導入する.
関数 \(d\) を線形写像であるとして定義する. 即ち、
\(\omega, \eta \in A^{k-1}\) について
\[d(\omega + \eta) = d\omega + d\eta.\]
積は普通の微分っぽく定義する. 即ち、
\(\omega, \eta \in A^{k-1}\) について
\[d(\omega \eta) = d\omega~\eta + \omega~d\eta.\]
基本、外微分は全部 \(d\) と書くが、特別に \(d: A^{k}(U) \to A^{k+1}\) の写像を 強調して \(d^k\) と書く場合がある.
関数の\(k\)回適用と被るけど、こちらを優先する.
この定義の中でも、あるいは 第2微分形式の定義の中でも、暗黙的に微分形式どうしの積 (e.g. \(dx~dx\), \(d\omega~\eta\)) を用いてきたが、 順序を入れ替えるとマイナスになるなど、 実数の積とは異なる性質を導入している. ここで使ってきた、微分形式どうしの積のことをウェッジ積といい、 明記する場合は2項演算子 \(\land\) を用いる.
グリーンの定理、ガウスの定理、ストークスの定理などを前に挙げたが、 より一般化してそれらを一つの形に統一できる. それは次のようなものである.
微分形式 \(\omega\) と、ある領域 \(D\) 及びその境界 \(\partial D\) について
\[\int_{\partial D} \omega = \int_D d\omega.\]
領域 \(D\) が二次元上の閉区間ならば、その周回が \(\partial D\) である. 三次元上の閉区間ならば、その表面が \(\partial D\) である. また二次元上の閉区間を三次元に写したものなら、その周回を写したものが \(\partial D\) である.
例えば、 \(\omega = fdx+gdy+hdz\) を代入すると、ストークスの定理を得る.
ある \(\eta\) と、ある領域 \(D\) とについて、 ストークスの定理を二回使えば
\[\int_{\partial(\partial D)} \eta = \int_{\partial D} d\eta = \int_D d(d\eta)\]
を得られる. ここで先述したように \(d^2(\eta)=0\) であるから、 この式の値は \(0\). これはどんな \(\eta\) についても成立する.
すなわち、どんな微分形式 \(\eta\) および領域 \(D\) について \[\int_{\partial(\partial D)} \eta = 0\] であると言っている. これは、積分区域 \(\partial(\partial D)\) が空でないと成り立たない.
実際、任意の領域について、その境界の、さらにその境界は、空集合 (境界は境界を持たない).
\(d(d\omega)=0\) という性質は重要で、 例えばベクトル場の \(\text{div}(\text{rot} f)=0\) に対応している.
これはベクトル場 \(X=(f,g,h)\) に 第一微分形式 \(f~dx+g~dy+h~dz\) を対応付けると、
\(d^1: A^1 \to A^2\) は \(\text{rot}\) に、 \(d^2: A^2 \to A^3\) は \(\text{div}\) に相当することがわかって、 \(\text{div}(\text{rot} f)=0\) は \(d^2(\omega)=0\) から自明になる.
ついでに書くと \(d^0: A^0 \to A^1\) は \(\text{grad}\) に相当する.
微分形式について完全である (exact) と、閉じている (closed) という2つの状態があることは先に述べた. 微分形式を形式的に定めた今、改めて述べると、
今、\(\omega\) が完全ならば、\(d\omega=d(d\eta)=0\) より、閉じていることは自明. \[\text{exact} \Rightarrow \text{closed}\] 即ち、 \(\text{Image}(d^{k-1}) \subseteq \text{Kernel}(d^k)\).
では、逆も成り立つだろうか. 即ち、 \(\text{Image}(d^{k-1}) = \text{Kernel}(d^k)\) だろうか.
2つの群 \(A \subseteq B\) があるとする.
\(b_1, b_2 \in B\) について同値 \[b_1 \sim_A b_2 \iff b_1 - b_2 \in A\] を定める. このとき、
\[B/A = B/\sim_A\]
と定める.
\(\text{Image}(d^{k-1}) \subseteq \text{Kernel}(d^k)\) は自明であると言った. ここで
\[H^k_{dR}(U) \equiv \text{Kernel}(d^k) / \text{Image}(d^{k-1})\]
と定め、 \(k\) 次 ドラム・コホモロジー群 という. もし、 \(\text{Image}(d^{k-1}) = \text{Kernel}(d^k)\) ならば、任意の二要素は同値だから、商集合は単集合になる.
\[H^k_{dR}(U) =_? \{0\}\]
\(U = \mathbb{R}^n\) の場合、この問題は \(k=0\) か否かで場合分けできる.
\(H^0_{dR}(U)\) は \(\text{Image}(d^{-1})\) と \(\text{Kernel}(d^0)\) を問題にする.
ところで \(A^{-1}\) をどう定義するかは述べたっけ. \(A^{-1}(U) = 0\) (単集合) とする.
\[\text{Image}(d^{-1}) = 0.\]
\(\text{Kernel}(d^0)\) とは、微分してゼロになる関数すべてのこと. それは定数関数のこと.
\[\text{Kernel}(d^0) \simeq \mathbb{R}.\]
従って、 \[H^0_{dR}(\mathbb{R}^n) = \mathbb{R}.\]
2つは同型、すなわち
\[H^0_{dR}(\mathbb{R}^n) = 0.\]