超準解析

2017-02-12 (Sun.)

フィルタ

超準解析とは何か?

1960年に Abraham Robinson が作った nonstandard analysis は無限の数を扱うなんか計算モデル? standard analysis (epsilon-delta) の上位互換として作られる.

定義

以下を満たす \(U\) を集合 \(J\) 上のフィルタ (filter) と呼ぶ.

  1. \(U \subseteq 2^J\)
  2. \(\emptyset \not\in U\)
  3. \(\forall A, B \in U, A \cap B \in U\) (intersection property)
  4. \(\forall A \in U, \forall B (A \subseteq B), B \in U\)

以下の \(U\)\(J\) 上の超ウィルタ (ultrafilter) と呼ぶ.

  1. \(U\)\(J\) 上のフィルタ
  2. \(\forall A \in J\) について次のどちらかちょうど一つが成立 (maximality)
    1. \(\{A\} \in U\)
    2. \(J \setminus \{A\} \in U\)

以下の \(U\)\(J\) 上の自由超フィルタ (free-ultrafilter) と呼ぶ.

  1. \(U\)\(J\) 上の超フィルタ
  2. \(\nexists A \in U, |A| < \infty\) (freeness)

諸定理

定理

\(A\) 上の超フィルタ \(U\) 及び \(A\) の有限個への分割 \(A_1, \ldots, A_n\) について \[\exists! i, A_i \in U\] が成立する.

証明

まず、\(\exists i, A_i \in U\) を背理法によって示す.

\(\forall i, A_i \not\in U\) を仮定すると maximality 故に \(\forall i, A \setminus A_i \in U\). 更に intersection property から \(\emptyset = \bigcap_i (A \setminus A_i) \in U\). これは \(U\) の超フィルタの定義に反する.

従って \(\exists i, A_i \in U\) は成立する.

異なる \(i = i_1, i_2\) についてこれが成立するとき、同様に \(\emptyset = \cap_{i=i_1, i_2} A_i \in U\) となるので、そのような \(i_1, i_2\) は存在しない.

以上から唯一の \(i\) で成立する.

定理

\(A\) 上のフィルタ \(F'\) から超フィルタ \(F\) を導くことができる. \(\Phi\)\(A\) 上のフィルタ全てからなる集合とする (\(F' \in \Phi\)).

\(\Phi\) の元に関して包含関係によって半順序を附けることができる. その最大限が欲しかった超フィルタ \(F\) である.

証明

(略)

定義

2つの \(n\) 次元実ベクトル \(a, b\) 、実数に関する二項演算 \(\circ\) に関して、 \(\{ i : 1 \leq i \leq n, a_i \circ b_i \}\)\[[\![ a \circ b ]\!]\] と書くことにする. 例えば \([\![ a = b ]\!]\) は、成分の値が等しいインデックスの集合.

超フィルタの法の下の等号性 (Equivalence Modulo an Ultrafilter)

超フィルタ \(U\) 及び2つの \(n\) 次元実ベクトル \(a, b\) について \[a = b \mod{U} \iff [\![ a=b ]\!] \in U\]

超フィルタの法の下の順序

\[a \leq b \mod{U} \iff [\![ a \leq b ]\!] \in U\]

この順序は全順序である.

について

\(U\) によって成立する. 例えば \(\{0,2,4,\ldots\} \in U\) なる超フィルタが作れる.

Ultrapower

ある超フィルタ \(U\) を法とする等号によって \(n\) 次元実ベクトル空間 \(R^n\) の同値類を取った空間を 超実空間 (hyperreal) と呼び \({}^*R\) と書く. 次のように加算と乗算を定めることで体になる.

成り立ってほしい性質はだいたい成り立つ.

加算に関する単位元

同様に乗算に関する単位元

\(U\) の法の下で、それぞれ単位元は唯一に存在する.

逆元

とすることで \(+\) に関する \(a\) の逆元 \((-a)\) を構成することができる. 唯一の存在であることも確認できる. 2つの逆元 \(m, n\) があるとする.

このとき

ということで自明に \(m = n \mod U\). というわけで \(U\) の法の下で逆元は唯一.

乗算に関してもだいたい実数と同じ.

無限小、無限大

自然数の列の集合を \({}^*N\) と書く. \(a \in {}^*R\)\(n \in {}^*N\) との大小を超フィルタ \(U\) の下で定める.

  1. \(\forall n \in {}^*N, a \leq n\) を満たす \(a\) を無限小と呼ぶ.
  2. \(\forall n \in {}^*N, a \geq n\) を満たす \(a\) を無限大と呼ぶ.