2016-12-27 (Tue.)
集合 \(G\) が群であるとは積 \(G \times G \to G\) が定められたもの. 積には次の3つのルールの成立を仮定する.
\(G\) が群であることと、
\[\forall g, h \in G. ~ g h^{-1} \in G\]
とは同値.
集合 \(I_n = \{1,2,\ldots,n\}\) について、\(I_n \to I_n\) の全単射は (\(n\) 次の) 置換と呼ばれる. 置換全体を \(n\) 次の 対称群 \(S_n\) と呼ぶ. その名の通り、これは群を成す. 積は関数合成. 単位元は恒等関数.
置換 \(\sigma\) を
\[\left(\begin{array}\\ 1 & 2 & \cdots & n\\ \sigma(1) & \sigma(2) & \cdots & \sigma(n) \end{array}\right)\]
と書く.
\(n\) 次の置換 \(\sigma\) について、\(\sigma\) は
\[J(k, \sigma) = \{k, \sigma(k), \sigma^2(k), \ldots, \sigma^{n-1}(k) \}\]
を巡回するように置換し、他の値を置換しないとき、
つまり、
で、
というとき、 置換 \(\sigma\) を
\[\left(\begin{array}\\ k & \sigma(k) & \sigma^2(k) & \cdots & \sigma^{n-1}(k) \end{array}\right)\]
と書いて、 巡回置換 と呼ぶ. \(n\) を \(\sigma\) と長さと言う.
ある条件 \(\text{cond}\) の下で (\(e\) とも) 相異なるいくつかの元 \(a,b,\ldots\) に対して
\[\{ e, a, b, \ldots, a^2, ab, ba, b^2, \ldots, a^3, a^2b, aba, ab^2, ba^2, bab, b^2a, b^3, \ldots \}\]
を、\(a,b,\ldots\) が 生成 する群だといい、略記して
\[\langle a,b,\ldots | \text{cond} \rangle\]
と書く.
ある元 \(g\) について、ある自然数 \(n\) があって
のとき、
\[\langle g \rangle = \{e, g, g^2, \ldots, g^{n-1}\}\]
であるが、これを 巡回群 という. 位数 (集合のサイズ) は \(n\) であり、\(C_n\) と書く.
積の交換則 \[ab = ba\] が成立する群をAbel群という.
とは、次の群のこと.
\[V_4 = \langle a,b | a^2=e, b^2=e, ab=ba, a\ne b \rangle\]
明らかにこれはAbel群である.
特に置換に見られるように、群の成分には一つの操作を対応させることがしばしばある. 群の要素を手続きとみなした場合の関数適用を、「群の (左) 作用」という.
群 \(G\) を集合 \(S\) へ作用させる手続きを
\[\rho: G \times S \to S\]
と書く. 関数適用を
\[\rho(g, s) = g \circ s = g(s)\]
などと書く.
ただし群の作用には次の2つのルールを仮定する.
群 \(G\) から別な群 \(G'\) への写像 \(f: G \to G'\) であって、
\[f(gh) = f(g) f(h)\]
を満たすものをそう呼ぶ.
体 \(V\) の上の正則正方行列全体を \(GL(V)\) と書く. 多くの場合、 \(GL(V)\) とは、サイズが \(n \times n\) で、成分が複素数な正則正方行列全体 \(GL(n:\mathbb{C})\) のことだと思って構わない. 群 \(G\) に対して、
\[\rho: G \to GL(V)\]
なる写像を、群 \(G\) の 表現 という. 場合に依っては単に行き先 \(GL(V)\) のその \(V\) を \(G\) の表現と言ったりもする. 行き先の行列のサイズ \(n\) を、この表現の次元という.
位数 2 の巡回群とは \(C_2=\{e,g\} (g^2=0)\) であるが、これの表現を具体的に与えてみる.
まず一次元表現の場合. 表現という写像の値域は \(GL(1:\mathbb{C})\). これはゼロ以外の複素数のこと. すなわち \(\mathbb{C}^\times = \mathbb{C} \setminus \{0\}\). 定義域は \(C_2\) であるので、 \(\rho(e)\) および \(\rho(g)\) を実際に与えれば表現を与えたことになる. 満たすべき性質はそれが準同型写像であることだけなので、
これらから
従って二通りの表現が得られることが分かった.
一般に、任意の元を全て \(\rho(e)\) (それは 1 ライクな値) に写すものは表現の一つになっていて、これを自明な表現 \(\mathbb{1}\) と書くことにする. 対して \(+1\) と \(-1\) が交互に並ぶ感じのを \(\mathbb{sgn}\) と書く.
今の場合、\(C_2\) の一次元表現として \(\mathbb{1}\) と \(\mathbb{sgn}\) との2つが得られた.
次に二次元表現の場合. 値域は、普通に、行列式がゼロではない、複素 \(2 \times 2\) 行列. 先と同様の考察から、
自乗して \(I\) になるような行列は色々ある.
どの表現になるかはこれ以上からは一意には定まらない. 次の例に話を続ける.
2変数 \(x,y\) の一次式全体という集合 \(V\) を考える:
\[V = \{ax+by : a,b \in \mathbb{C}\}.\]
この要素について、 \(x, y\) を入れ替えるという操作 \(g\) を含む群を
\[G = \{e,g\}\]
とする. 操作の意味から \(g^2=e\) は自明. 従ってこの群自体は \(C_2\) である.
さて、\(V\) の要素 \(ax+by\) は、\(x, y\) を基底にとって
\[\left(\begin{array}\\a\\b\end{array}\right)\]
と書ける. この時 \(g\) の作用を
\[g \circ \left(\begin{array}\\a\\b\end{array}\right) = \left(\begin{array}\\b\\a\end{array}\right)\]
と書ける. ここで \(g\) をその表現で置き換えると
\[\rho(g) \circ \left(\begin{array}\\a\\b\end{array}\right) = \left(\begin{array}\\b\\a\end{array}\right)\]
となるが、ちょうどここに二次元表現が来ると、行列の演算であるように見える. だとすると、\(\rho(g)\) としてふさわしい行列は、一意に定まって
\[\left(\begin{array}\\ 0 & 1\\1 & 0 \end{array}\right) \left(\begin{array}\\a\\b\end{array}\right) = \left(\begin{array}\\b\\a\end{array}\right)\]
とすべきだろう. \(\rho(g) = \left(\begin{array}\\ 0 & 1\\1 & 0 \end{array}\right)\) としたわけであるが、これはちゃんと自乗したら \(I\) になる行列.
ところで基底のとり方を \(x, y\) としたが、別にそうする理由はない. 例えば \(x+y, x-y\) という基底のとり方もあり得る. この場合
\[g \circ \left(\begin{array}\\c\\d\end{array}\right) = \left(\begin{array}\\c\\-d\end{array}\right)\]
とすればいいだけなので、
\[\rho(g) = \left(\begin{array}\\ 1&0\\0&-1 \end{array}\right)\]
という表現がふさわしく見える.
以上の例は、準同型の制約からは表現は一意に定まらないが、それらは所詮、基底のとり方で変わるだけだという主張を支えるものである.
表現 \(\rho: G \to GL(V)\) の部分表現 \(W\) とは、 \(W \subseteq V\) であって、 \(w \in W\) への (左) 作用を考えた時に
\[\forall g.~ \forall w.~ g \circ w \in W\]
が成立するもの. 自明な部分表現として \(V\) 自身と \(\emptyset\).
\(V\) の部分表現として \(V\) 自身と \(\emptyset\) 以外の表現を持たないような \(V\) を 既約表現 という.
有限群 \(G\) とその表現 \(V\) について、 \(V\) は有限個の既約表現の直和に分解できる:
\[V = V_1 \oplus V_2 \oplus \cdots \oplus V_k\]
ここで、表現の直和とはデカルト積.
例えば \(V=\{ax+by\}\) は \(V_1=\{a(x+y)\}\) と \(V_2=\{b(x-y)\}\) とに分解できる. すなわち、
\[ \left(\begin{array}\\ 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{array}\right) \left(\begin{array}\\ a\\b \end{array}\right) = \left(\begin{array}\\ 1 \end{array}\right) \left(\begin{array}\\ a \end{array}\right) \oplus \left(\begin{array}\\ -1 \end{array}\right) \left(\begin{array}\\ b \end{array}\right) \]
と言っている.
群 \(G\) の2つの表現 \(V\) と \(W\) の間の 射 \(f: V \to W\) とは、線形写像であって、また群の作用について準同型なもののこと.
すなわち、 \(g \in G\), \(v \in V\) について
\[f(g \circ v) = g \circ f(v)\]
すなわち、
\(V \to W\) なる射全体を \(\text{Hom}(V, W)\) と書く.
には先程示したように \(\mathbb{1}\) と \(\mathbb{sgn}\) とがある.
\(\mathbb{1} \to \mathbb{sgn}\) にどんな射があるだろうか.
射 \(f\) は線形関数でないといけないとした. 一次元の上の線形関数はスカラー倍する関数 \(f(x) = ax\) しかない. 準同型であるべきという制約から
これらが \(v \in V\) で等しくある必要があるので、結局 \(a=0\). 即ち、 \[f(x) = 0\] なる射だけがあり得る.
\(V=\{ax+by\}\) の \(x\) と \(y\) を入れ替える操作 \(g\) の表現. 先ほど見たように \(x+y, x-y\) を基底に取ると、
\[\rho(g) = \left(\begin{array}\\1 & \\ & -1 \end{array}\right).\]
これを参考にして、\(V \to V\) の射を調べる. 二次元表現の線形関数なので、\(2 \times 2\) 行列 \(A\) だと思えばいい.
従って \(\text{Hom}(V, V) \simeq \mathbb{C}^2\) であることが分かる.
2つの表現 \(V, W\) が同型 \(V \simeq W\) であることを、次のように定める. 2つの表現の間の射
があって、\(g \circ f = id_V\) , \(f \circ g = id_W\) が成り立つこと.
\(G\) の2つの 既約 表現 \(V, W\) について次が成立する.
\[\text{Hom}(V,W) \simeq \begin{cases} \mathbb{C} & \text{ when } V \simeq W \\ 0 & \text{ otherwise } \end{cases}\]
明らかに \(V \simeq V\) であるが先ほど見たように \(\text{Hom}(V, V) \simeq \mathbb{C}^2\) であった. これから \(V\) が規約ではないことが分かる.
簡単な証明を与える.
Abel 群 \(G\) の表現 \(\rho: G \to GL(V)\) を考える. \(G\) の可換性と \(\rho\) の準同型性から、
\[\rho(g) \rho(h) = \rho(gh) = \rho(hg) = \rho(h) \rho(g)\]
\(\{ \rho(g) : g \in G \}\) もまた可換群であることが分かる.
ところで、
\[\rho(g) \rho(h) = \rho(h) \rho(g)\]
は \(h\) という左作用をかける操作自体が \(V \to V\) の射になっていることを言っている.
\[ \begin{array}\\ v & \rightarrow^h & \rho(h, v) \\ \downarrow & & \downarrow \\ \rho(g, v) & \rightarrow^h & \rho(g) \rho(h, v) \end{array} \]
Schur の補題から \(\rho(h) \ni \text{Hom}(V,V) \simeq \mathbb{C}\). スカラー倍するという関数だけで ???
メモ不明
\(C_n\) はAbel群なので、一次元表現、すなわち \(\rho: C_n \to C^\times\) だけを考えればよい.
\(\rho(e) = 1\) は自明. \(\rho(g)\) を決めた場合、 \(\rho(g^2), \rho(g^3), \ldots\) は自動的に定まるので、 結局 \(\rho(g)\) の値を定めることが、\(\rho\) を定めることになる.
満たすべき性質は、 \(g^n = e\) なので、
\[\rho(g)^n = 1\]
\(1\) の \(n\) 乗根は一般に \(n\) 個ある:
\[\rho(g) = 1, \omega, \omega^2, \ldots, \omega^{n-1}\]
ここで \(\omega = \exp(2 \pi i / n)\).
従って、\(C_n\) の既約表現は \(n\) 通りあり得る.
実はAbel群 \(G\) の規約表現は、その位数 \(\#G\) と同じ数だけ存在する. そしてその表現の間の積を
\[(\rho_1 \times \rho_2)(g) = \rho_1(g) \times \rho_2(g)\]
と定めることで、表現全体という集合も群になる.
群 \(G\) とその部分群 \(H\) があるとき、\(H\) の下で \(G\) の同値関係を
\[g_1 \sim g_2 \iff g_1 g_2^{-1} \in H\] と定義する. \(G\) を \(H\) で割った商群を \[G/H = G/\sim = \{ [g] : g \in G \}\] と定める.
\(g_1 g_2^{-1} \in H \iff g_1 g_2^{-1} = h \iff g_1 = h g_2\) から、逆に、\(g_2\) から同値クラスは \([g_2] = H g_2 (= \{ h g_2 : h \in H \})\) などと書ける. そういうわけで、 \[G/H = \{ Hg : g \in G\}\] というふうに書いたりもする.
\(G/H\) は \(G\) という集合の分割をしていると見ることもできる. すなわち、
\[G = \bigcup Hg = He \cup H g_1 \cup \cdots \cup H g_m\] \[G/H = \bigoplus Hg = He \oplus H g_1 \oplus \cdots \oplus H g_m\]
ここで \(m\) は代表元の数. そして明らかに \(\#Hg = \#H\). というわけで、位数に関して
\[\#G = m~\#H\]
これは次の定理を導く.
群 \(G\) の部分群 \(H\) の位数は \(\#G\) の約数
群の左作用 \[G \times S \to S\] \[(g, s) \mapsto g \circ s\] について.
次を \(s\) の \(G\) 軌道という.
\[G s = \text{Orb}(s) = \{ g \circ s : g \in G \}\]
そして次を不動点という.
\[\text{Fix}(s) = \{ g : g \circ s = s \}\]
\(\text{Fix}(s)\) は \(G\) の部分群です. なぜなら、 これが \(G\) の部分集合なのは自明で、 また、 \(\forall g,h \in \text{Fix}(s)\) について、 \((g h^{-1})(s) = g(h^{-1} \circ s) = g \circ s = s\) から \(g h^{-1} \in \text{Fix}(s)\) が成立するので群.
N.B. \(G\) が群であることと \(\forall g, h \in G. ~ g h^{-1} \in G\) は同値であった
ラグランジュの定理で \(H=\text{Fix}(s)\) と思うと、
\[G = \text{Fix}(s) g_1 \cup \text{Fix}(s) g_2 \cup \cdots \cup \text{Fix}(s) g_k\]
ここで \(g_1, g_2, \ldots, g_k\) は \(G/\text{Fix}(s)\) の異なる代表元のつもり. その個数 \(k\) は実は \(\#G s\) と一致する.
なぜなら、上の式で右から \(s\) を掛けると、
従って \(\#Gs = k\).
以上から、
\[\#G = \#\text{Fix}(s) \times \#Gs\]
群 \(G\) について \(h \in G\) の共役類とは、
\[c(h) = \{ h g h^{-1} : g \in G \}\]
のこと.
これも \(G (\ni g)\) の \(G (\ni h)\) への (左) 作用と見ることができる. すなわち、
\[G \times G \to G\] \[(g, h) \mapsto hgh^{-1}\]
とすると、\(c(h)\) は \(h\) の \(G\) 軌道. 不動点は \[Z_G(h) = \text{Fix}(h) = \{ g : hgh^{-1} = h \}\]
したがって、 \[\#G = \#c(h) \times \#Z_G(h)\]
共役類は同値関係を与える. すなわち、 \[g \sim h \iff \exists i. h = i g i^{-1} \iff g \in c(h)\]
\(G\) の規約表現全体を \(\hat{G}\) とする.
次の2つの定理がある:
\[\#G = \sum_{V \in \hat{G}} (\text{dim} V)^2\]
\[\# G \text{ の共役類} = \# \hat{G}\]
これらの定理を用いて、規約表現を頑張れば網羅して列挙できる.