2018-03-20 (Tue.)
\(\def\O{\mathcal{O}}\def\R{\mathbb{R}}\) ここでは「集合 \(X\) に位相を入れる」とはその開集合系 \(\mathcal{O}(X)\) を定めることだとする. そして、 既に位相が入った空間である \(X\) の点 \(x\) の近傍とは開集合であって \(x\) を含む集合、つまり \[x \in U_x \in \mathcal{O}(X)\] なる \(U_x\) の1つのことである.
逆に、集合 \(X\) とその各点 \(x\) に対して近傍 \(U_x\) を定めた時、自然に位相を入れることができる.
というのを今日知ったのでメモ.
開集合の性質として次のようなものがある.
\(U\) が開集合であるとき、またそのときに限り、任意の点 \(x \in U\) についてその近傍 \(V_x\) があって、 \[\forall x, \exists V_x, x \in V_x \subseteq U.\]
これを利用する.
集合 \(X\) とその各点 \(x\) に対して近傍 \(U_x\) が定まっているとする. このとき、次によって開集合系を定める.
\(U\) が開集合である とは 次が成立すること: \[\forall x, \exists V_x, x \in V_x \subseteq U.\] ここで \(V_x\) は \(x\) の近傍.
ただし、これが確かに開集合系であることを確認するには、開集合系の公理を確認する必要がある. そして、それはそもそも近傍が適切なものである必要がある.
開集合系の公理は次のようなものであった.
1つめは自明に成り立つ. \(U=\emptyset\) のとき、\(x \in U\) なる点がないので開集合としての条件が自然に成立する. 従って \(\emptyset\) は開集合である. \(U=X\) のとき、任意の点 \(x\) に対してその近傍 \(U_x\) はあることになっているので、\(U_x \subset X\) より、\(X\) もやはり開集合である.
点 \(x\) に対して任意の近傍 \(U_x\) を取ってくる. \(U_x\) 自体も開集合としての条件を満たしている (\(x \in U_x \subseteq U_x\)) ので、\(U_x\) も開集合である. 従って近傍系は開集合系の部分である.
一般には、いくら開集合系を生成するような近傍系であってもその近傍自身が開集合になるかは分からない. \[\forall U_x, \forall y \in U_x, \exists U_y, U_y \subset U_x\] であればよいが、(上で打ち消されてるように) \(U_y = U_x\) がいつも使えるわけではない. それは近傍はあくまでも点に対して定められているため.
\(\mathbb{R}\) に近傍を与える. 点 \(x \in \mathbb{R}\) の近傍全てを次で与える: \[\mathcal N_x = \{ [a,b] ~|~ a < x < b \}.\] つまり点 \(x\) の近傍は \(U_x \in \mathcal N_x\) で定められるもので、 \(x\) を中に含む閉区間だとする. \(x\) を端に持つ閉区間を除いていることに註意. この近傍系によって生成される位相は、普通の (開集合を近傍として生成される) 位相と一致するが、明らかに \([a,b]\) は開集合ではない.
\(X=\R^n\) の場合、開球が近傍の例. \[B_r^x = \{ y \in \R^n : \|x-y\|^2 < r^2\}\] ただし \(r\) は任意の正数.
これを近傍とすることで開集合系 \(\O(\R^n)\) を定める.
1つ目は自動的に成り立つので、公理の2つ目をチェックする.
\(U_1, U_2\) が開集合であるとする. \(U_1 \cap U_2\) を考える. これが空集合とすると自明に開集合なので、空集合でないときを考える. 空でないので少なくとも1点 \(x\) を含む. \(x \in U_1\) なので、ある近傍 \(B_r^x\) があって、 \[x \in B_r^x \subset U_1\] が成り立つ. 同様に \(U_2\) についてもある近傍があって \[x \in B_{r'}^x \subset U_2\] を満たす. \(r'\) は先ほどの \(r\) と一致するとは限らない.
この2式の \(\cap\) を取ってみると \[x \in B_r^x \cap B_{r'}^x \subset U_1 \cap U_2\] が言える. さて、 \(B_r^x, B_{r'}^x\) はどちらも点 \(x\) を同心とする球なので、その積は簡単に、\(q = \min{r,r'}\) として \[B_r^x \cap B_{r'}^x = B_q^x\] である. 従って、 \[x \in B_q^x \subset U_1 \cap U_2\] この式は、\(U_1 \cap U_2\) についても、やはり近傍 \(B_q^x\) が在って開集合の条件を満たすことを言っている. というわけで \(U_1 \cap U_2\) も開集合である.
大雑把に言えば、 今見たように、近傍と近傍の空でない積が、尚も近傍の形を保っていれば、近傍として良い物で、それは開集合系を誘導するものである.
次に公理の3つ目をチェックする.
\(U_i\) が開集合だとする. \(\bigcup_i U_i\) を考える. やはり空でなく、\(x \in \bigcup U_i\) とする. \(\exists i, x \in U_i\) が言える. \(U_i\) は開集合なので、ある近傍があって \[x \in B_r^x \subseteq U_i.\] \(U_i \subseteq \bigcup U_i\) なので \[x \in B_r^x \subseteq \bigcup_i U_i.\] というわけで \(\bigcup_i U_i\) も開集合.