「おジャ魔女どれみ」 20周年記念の劇場作品. おジャ魔女一期の放送開始が 1999 年の 2 月で, この映画の放映開始が 2020 年の 11 月なので, 何から20周年なのかはちょっとイマイチわからないけど.

おジャ魔女を全く見てないならさすがにこれだけ見ても感動はないと思う. かといって全シリーズを総復習まではしなくていい. 当時見た覚えがある, くらいのコンディションが最高に楽しめていいはずだ.

さて20周年記念作品であるというだけであって, この作品自体はおジャ魔女どれみの続編とかではない. 「子供の頃におジャ魔女どれみにハマっていた」人たちが大人になった今をテーマにした作品であって, おジャ魔女どれみはいわばモチーフでしか無い. つまり, この作品の主人公(たち)は映画を見に来てる人と同じような境遇の人たちである. こんな映画を見に来るような人はそういう人で間違いないからね.

おジャ魔女以来, 東映は日曜朝の枠を確保してアニメを流し続けてきた. それがついにプリキュアになってからは, 一年ごとにキャラクターも世界も刷新し, プリキュアのタイトルと設定はそのままだが, 基本的には別の作品になってしまう. グッズをどんどん新しく作って, 去年までのグッズを時代遅れにしないといけない, そういう事情がある. それはプリキュアの二代目から始まった文化だが, そんな制作側の思惑とは裏腹に, 我々は未だに20年前のアニメに心を囚われ魅了され続けている. そんな人たちへの制作陣からの感謝と, これからも好きでイてくれという, あんまり堂々とは言えない, ひっそりとしたメッセージだと, 私は解釈している.

内容について. あのニチアサの馬越の絵でもって, はっきり大人向けに「おジャ魔女」を作り直してくれた作品である. おジャ魔女自体のネタバレを少しするが, 様々な困難を抱えた女の子たちが魔法の力で解決すべく, 魔女を目指す, そういうお話だ. しかし, この「魔女見習いを探して」は, 魔法のある世界のお話ではなく, 映画を見ている我々の世界と地続きにあるお話だから, そこに魔法はない. 大変地味で泥臭い方法で困難を乗り越えるしかない. ホウキで飛ぶ代わりに深夜バスに乗るし, 人の心を操る魔法は使えないから人間関係に困難を抱えたままだ. しかし憧れは心の支えになる.

あ, そうそう. おんぷちゃんが好きなあの男が出てきたのは, 自分の中でも賛否両論だ. せっかくの20周年記念作品だし, それ単体として, キレイな作品を作る方法もあった. そしてそれなら, あんなのは出さない方が良かったんじゃないかと思う. おジャ魔女の三人をモチーフにするヒロイン三人だけでお話を作っていればどれだけ美しかったか. しかし, そうは作らなかったわけだ. これは我々をテーマにした作品であって, 東映からのファンへのアンサーだ. そこには男のオタクもいて当然だから, 登場しないわけにはいかないのだろう.

決して, すべてがハッピーに終わるわけではないのもまた, おジャ魔女を踏襲していていい.

ところで, 今まで普通に声優に歌わせてた楽曲を突然子どもたちに歌わせたのを流すというの, 好きじゃない. あれもおジャ魔女最終話の踏襲なのは分かってるけど. けどさ...