Transformer に代わる Retentive Network (RetNet) を提案する.
性能面ではモデルサイズ 2.7B 程度を境界に Transformer を超える (Figure 5).
推論時間について. 使用メモリとスループットで常に Transformer より良い (Table 4). 特にシーケンス長に対するスケールに優れてるとされてるので, 実験ではシーケンス長 8192 で実験してる.
予測時間について. 系列の長さに依存せず \(O(1)\) で完了する. これはある時刻において次を予測する計算の話.
そもそも Transformer は長さ \(N\) の系列に関して \(N^2\) のアテンション行列を作るので, 自乗の計算時間が推論にも予測にも掛かる. 潜在ベクトルが \(d\) 次元だとすると \(O(N^2d)\) .
Multi-scale Retention (MSR) module と Feed-forward Network (FFN) module で RetNet block と呼ぶブロックを構成する. このブロックを \(L\) 個並べたものを RetNet とする.
\(d\) 次元長さ \(N\) の系列データ
\[X = [x_1, x_2, \ldots, x_N] \in \mathbb R^{N \times d}\]を扱う. ここで \(d\) は潜在ベクトル (hidden state) の次元数だとして扱う.
一つの RetNet block は系列データを系列データに写す.
\[\mathrm{RetNet block} \colon \mathbb R^{N \times d} \to \mathbb R^{N \times d}\]RetNet は \(L\) 個の RetNet block で逐次実行する.
\[X^0 \in \mathbb R^{N \times d}\] \[X^{t+1} = \mathrm{RetNet}_t(X^t)\]基本的には Recurrent Network のノリと同じで, hidden state \(s\) を作って, output state \(o\) を作る. その前に入力 \(X\) を一次元の系列 \(v\) に射影する.
\[X = [x_1, x_2, \ldots, x_N] \in \mathbb R^{N \times d}\] \[v_n = x_n \cdot w_V ~;~ w_v \in \mathbb R^d, v_n \in \mathbb R\]この \(v\) に関して Recurrent Network のように,
\[s_n = A s_{n-1} + K_n \cdot v_n ~;~ A \in \mathbb R^{d \times d}, K_n \in \mathbb R^d\] \[o_n = Q_n s_n\]2つ目に1つ目を代入してすべて展開すると,
\[o_n = Q_n \sum_{m=1}^n A^{n-m} K_m v_m\]そして \(Q,K\) はアテンションのノリで次のように定める.
\[Q = X W_Q ~;~ W_Q \in \mathbb R^{d \times d}\] \[K = X W_K ~;~ W_K \in \mathbb R^{d \times d}\]ここで \(W_Q, W_K\) が学習されるパラメータ.
さて \(A\) の累乗という計算が重たいので, これを対角化する. 次のような対角化をしている.
\[A = \Lambda (\gamma \exp(i\theta)) \Lambda^{-1}\](たぶんだが) \(\exp\) のところは次のような対角行列のことだろう.
\[\gamma \exp(i\theta) = \left[\begin{array}{cccc} \gamma_1 \exp(i\theta_1) & & & \\ & \gamma_2 \exp(i\theta_2) & & \\ & & \ddots & \\ & & & \gamma_d \exp(i\theta_d) \\ \end{array}\right]\]こうすると \(A\) の累乗は
\[A^{n-m} = \Lambda (\gamma \exp(i\theta))^{n-m} \Lambda^{-1}\]と書ける. これを代入して,
\[o_n = \left( Q_n (\gamma \exp(i\theta))^n \right) \sum_{m=1}^n \left( (\gamma \exp(i\theta)^{-m}) K_m \right) v_m\]エルミート転置の \(\dagger\) を使うと
\[o_n = \left( Q_n (\gamma \exp(i\theta))^n \right) \sum_{m=1}^n \left( K_m^t (\gamma \exp(i\theta)^m) \right)^\dagger v_m\]曰く, \(\left( Q_n (\gamma \exp(i\theta))^n \right)\) と \(\left( K_m^t (\gamma \exp(i\theta)^m) \right)\) が xPos, すなわち Transformer における位置埋め込みになってるという.
より簡潔な行列表記していこう. これをやると並列計算が可能になる.
\[\Theta \in \mathbb C^{N \times d} ~;~ \Theta_{nd} = \exp(in \theta_d)\]を用意する. またこれの共役を取ったものを \(\bar{\Theta}\) とする.
また上三角行列
\[D_{nm} = \begin{cases} \gamma^{n-m} & \text{ if } n \geq m \\ 0 & \text{ otherwise } \\ \end{cases}\]を用意する. すると,
\[V = XW_V\] \[Q = (XW_Q) \odot {\Theta}\] \[K = (XW_K) \odot \bar{\Theta}\]これが RetNet の一つの形式化である.
Recurrent Network のようにステップを逐次的に書くと次のようになる.
\[S_n = \gamma S_{n-1} + K_n V_n\] \[\mathrm{Retention}(X_n) = Q_n S_n\]これもまた別な形式化になってる.
潜在ベクトル \(d\) 次元を, \(h\) 個に分ける. 一個当たり \(d/h\) 次元である. そのそれぞれに関して Retention する. アテンションでもあった Multi-head のこと.
ところで形式化で出てきた \(\gamma\) をこの head ごとに固定して使う. だから Multi-scale.