本当に東京は面白い場所がない. つくづく、そう思った. 小説家を目指すならばこんな街に住むべきではないし、小説家ならばこんな土地に住んではいけないだろう. でないと、あんなつまらない、ただ人間と人間とが喋るだけの面白くない小説しか書けないでしょう.
今日は神保町に出掛けた. 実は昨日も出掛けた. 土日の両方に二度も外出するなんて基本的にはバカのすることであり、用事は一度で済ますべきなのだ. 自分がすべき用事をわざわざ紙にメモし、それを胸ポケットに入れて出掛けた. 紙には 公共料金、単4電池、それから買いたい本の題を2つ書いた. 家の近所のコンビニで公共料金を支払い、道中の雑貨店で単4電池を購入した. 内一冊の本を書店で探すのに夢中になり、結局見つからずに帰宅し、もう一冊のことをすっかり失念していた. その本を買えるのであれば神保町である必要はなく、また何かの機会についでで買えばいいのだが、 その買い忘れた本のことがなんだか、袖についた米粒のような存在となってしまい、 仕方なしにまた出かける次第となった.
東京がつまらない原因の一つは、基本的に外は人間が徒歩をするのに向いていないことにある. 空気は排気ガスで汚れていて、なんだか臭い. したがって人間は地下鉄に乗る. 地下鉄の景色はトンネルと、定期的に出現する駅のホームしかない.
神保町のごはん処には私はそれなりに造詣がある. なんといっても私は、二年ほど神保町に通っていたのである. 例えば、万人に勧められるのは、うどんの丸香だろう. とにかく腹いっぱい食べたいのなら、さぼうる2というコジャレたお店がある. 人を選ぶがいつも長蛇の列を為すカレー屋、まんてんがある. 実は昨日は、まんてんにてシュウマイの大盛りを食べた. 是非とも今日は別なものを食べねばなるまい.
私が神保町で一番好きな店がある. 中華料理の上海庭である. 実のところ、この店名をなんと読むのか分からない. 私はシャンハイテイと読んでいる. このお店の何が良いかと言えば、定食がそれなりに安く腹いっぱい食べられる上、 何を注文したに関わらず、コーヒーやサラダ、そして今日のおかずが取り放題のコーナーがあることだ. 日によって豪華であるときとそうでないときがあるし、一つのおかずが終わったら次のおかずが来ることもあれば、 時間帯に依っては終わってしまうこともある. ギャンブル性が強いのが今日のおかずである. 注文をしてから料理が来るまでの間、私はコーヒーと今日のおかずであるところの春巻きを楽しんでいた. それから料理が来、八割ほど食べ終わった頃、なんとなしに財布の中身を確認した. そう言えば、さっき本を買った時に、最後の千円札を出した記憶がある. この料理は650円. 足りるだろうか. 本の値段を考えると、足りない気がする. いやでも. 最後のお札が千円札だったというだけで、その時に十分な小銭があった可能性はないか. 公平に考えれば、小銭は1000円未満であって、平均を取れば500円だ.
1500円から本の値段800円を引く.
ギリギリ足りる.
しかし果たして.
結論を言うと、お店の方の優しさに助けられた. 支払うのはいつでも良いよ、とまで言って頂いた. もちろんその足で最近のATMでお金を降ろして支払ったが.
それから本当につまらなくなった. 人間がやることはこうも面白くない. お金は嫌いだ. それにまつわることも嫌いだ. 数学だけが楽しい. 数学は本当に架空のものな気がする.