群 \(G\) の集合 \(X\) に対する作用を考える. 即ち、群の任意の要素 \(g\) は \(g: X \to X\) なる関数として振る舞う. \(x \in X\) の \(g\) による像を単に \(gx\) と書く.
\[\forall g \in G, g : X \to X\]\(G\) の点 \(x \in X\) に関する固定部分群とは
\[G_x = \{ g \in G : gx = x \}\]である. 別の点 \(y \in X\) についても同様に
\[G_y = \{ g : gy = y \}\]がある.
今 \(y = h x (h \in G)\) だとする. \(G_y\) の任意の要素 \(g\) について、定義より
\[gy=y\]\(y=hx\) を代入して
\[ghx=hx\]両辺に左から \(h\) の逆元 \(h^{-1}\) を掛けて
\[(h^{-1}gh) x = x\]を得る. 定義より
\[(h^{-1}gh) \in G_x\]を得る.
全く同様に、任意の \(g \in G_x\) に対して、
\[(hgh^{-1}) \in G_y\]が存在する.
このようにして、 \(G_x\) の要素を \(G_y\) の要素は一対一対応している.
\[G_x \cong G_y\]写像
\[f: X \to Y\]に対して、 ある同値関係 \(\sim\) について、
\[\forall x_1,x_2 \in X, x_1 \sim x_2 \Rightarrow fx_1 = fx_2\]のとき、これを用いて
写像
\[f': X/\!\sim \to Y\]を定義できる.
digraph {
bgcolor=transparent;
rankdir=LR;
node [shape=plaintext];
X -> "X/~" [label="p"];
X -> Y [label="f"];
"X/~" -> Y [label="f'"];
}
写像 \(f\) が連続ならば、 \(f'\) もまた連続である.
連続であることの定義に忠実に、 \(Y\) の中の開集合 \(U\) の引き戻しが開集合であることを示す. \(f\) が連続であることは仮定しているので
\[f^{-1}(U) \subseteq X\]は開集合.
商集合の位相は \(X\) の開集合を \(p\) で写したものを開集合であるとして定義するものなので、もちろん
\[p(f^{-1}(U)) \subseteq X/\!\sim\]は開集合.
\(p(f^{-1}(U))\) という集合が実は \(f'^{-1}(U)\) と同じものであることを示す. そうであれば、開集合 \(U\) を引き戻したものが開集合なので \(f'\) は連続写像であることを示されたことになる. この2つの集合が同じものであることはだいたい自明.
ゼロを除いた \(\mathbb{C}^{n+1}\) について、 ゼロでない複素数倍を同一視したものを \(n\) 次元射影複素空間 \(\mathbb{C}P^n\) というのであった.
\(n+1\) 次元ユークリッド空間の中の、原点からの距離が 1 である点からなる空間を \(n\) 次元球面 \(S^n\) というのであった.
点 \((z_1,\ldots,z_n,z_{n+1}) \in \mathbb{C}^{n+1}\) を割って写る点を
\[[z_1 : \ldots : z_n : z_{n+1}] \in \mathbb{C}P^n\]と書く.
これに \(2n\) 次元の局所座標を与える. 実射影空間と全く同様に、ゼロでない \(z_i\) で他を割る. 今、 \(z_{n+1} \ne 0\) なる空間に制限して考えると、座標を
\[\left( \frac{z_1}{z_{n+1}}, \frac{z_2}{z_{n+1}}, \ldots \frac{z_n}{z_{n+1}} \right)\]とする. ただし、これは \(n\) つの複素数であり、その実部と虚部を取って \(2n\) つの実数と見做してそれを座標とする. 便宜上、複素数のまま書く.
証明は省略するが、これは局所座標として妥当.
点 \((x_1, x_2, \ldots, x_n, x_{n+1}) \in \mathbb{R}^{n+1}\) (ただし \(x_1^2 + x_2^2 + \cdots + x_n^2 + x_{n+1}^2=1\) ) を \(S^n\) に埋め込んだ点 \(p\) の座標を与える. \(x_{n+1} \ne +1\) に制限した空間と \(x_{n+1} \ne -1\) に制限した空間とで2つに分ける.
\(x_{n+1} \ne -1\) では座標を
\[\left( \frac{x_1}{1 + z_{n+1}}, \frac{x_2}{1 + z_{n+1}}, \ldots, \frac{x_n}{1 + z_{n+1}} \right)\]で与える. \(x_{n+1} \ne +1\) では
\[\left( \frac{x_1}{1 - z_{n+1}}, \frac{x_2}{1 - z_{n+1}}, \ldots, \frac{x_n}{1 - z_{n+1}} \right)\]で与える.
それぞれに次のように座標を与える. 基本的に先に述べたものをそのまま用いる.
点 \([z_1:z_2] \in \mathbb{C}P^1\) について、
\[\begin{cases} z_1 / z_2 & \text{where} ~ z_2 \ne 0 \\ z_2 / z_1 & \text{where} ~ z_1 \ne 0 \end{cases}\]そして球面の方であるが、座標の内、1つに余計にマイナスを掛ける. これくらいで座標が座標でなくなることはない.
点 \(p(x_1,x_2,x_3) \in S^2\) について、
\[\begin{cases} \left(\frac{x_1}{1+x_3}, \frac{x_2}{1+x_3}\right) & \text{where} ~ z_2 \ne 0 \\ \left(\frac{x_1}{1-x_3}, \color{red}{-}\frac{x_2}{1-x_3}\right) & \text{where} ~ z_1 \ne 0 \end{cases}\]次のような写像を考える. これが微分同相を与えるものである.
点 \(z_1/z_2 = z = x+iy\) を
\[(x,y) = \left(\frac{x_1}{1+x_3}, \frac{x_2}{1+x_3}\right)\]に写す.
点 \(z_2/z_1 = z = x+iy\) を
\[(x,y) = \left(\frac{x_1}{1-x_3}, \color{red}{-}\frac{x_2}{1-x_3}\right)\]に写す.
これがまず写像として正当であるためには、 一点がただ一点に写っている必要がある. 即ち、座標変換しても同じ点である必要がある. (マイナスをつけるのはここのため.)
\(\mathbb{C}P^1\) の点 \([z_1 : z_2]\) 、その座標 \(z_1/z_2 = z = x+iy\) を起点にする. これを \(S^1\) に写すと \((x,y) = \left(\frac{x_1}{1+x_3}, \frac{x_2}{1+x_3}\right)\) これを座標変換すると
\[\left( \frac{x}{x^2+y^2}, -\frac{y}{x^2+y^2} \right) = \left(\frac{x_1}{1-x_3}, \color{red}{-}\frac{x_2}{1-x_3}\right)\]これを \(\mathbb{C}P^1\) に写すと
\[\frac{x - iy}{x^2+y^2}\]これはちょうど、 \(z=x_iy\) の逆数になっている (そうなるように調整したから). なので点 \([z_1 : z_2]\) の座標になっている.