\(\def\O{\mathcal{O}}\def\R{\mathbb{R}}\) ここでは「集合 \(X\) に位相を入れる」とはその開集合系 \(\mathcal{O}(X)\) を定めることだとする. そして、 既に位相が入った空間である \(X\) の点 \(x\) の近傍とは開集合であって \(x\) を含む集合、つまり \[x \in U_x \in \mathcal{O}(X)\] なる \(U_x\) の1つのことである.
逆に、集合 \(X\) とその各点 \(x\) に対して近傍 \(U_x\) を定めた時、自然に位相を入れることができる.
というのを今日知ったのでメモ.
開集合の性質として次のようなものがある.
\(U\) が開集合であるとき、またそのときに限り、任意の点 \(x \in U\) についてその近傍 \(V_x\) があって、 \[\forall x, \exists V_x, x \in V_x \subseteq U.\]
これを利用する.
集合 \(X\) とその各点 \(x\) に対して近傍 \(U_x\) が定まっているとする. このとき、次によって開集合系を定める.
\(U\) が開集合である とは 次が成立すること: \[\forall x, \exists V_x, x \in V_x \subseteq U.\] ここで \(V_x\) は \(x\) の近傍.
ただし、これが確かに開集合系であることを確認するには、開集合系の公理を確認する必要がある. そして、それはそもそも近傍が適切なものである必要がある.
開集合系の公理は次のようなものであった.
1つめは自明に成り立つ. \(U=\emptyset\) のとき、\(x \in U\) なる点がないので開集合としての条件が自然に成立する. 従って \(\emptyset\) は開集合である. \(U=X\) のとき、任意の点 \(x\) に対してその近傍 \(U_x\) はあることになっているので、\(U_x \subset X\) より、\(X\) もやはり開集合である.
点 \(x\) に対して任意の近傍 \(U_x\) を取ってくる. \(U_x\) 自体も開集合としての条件を満たしている (\(x \in U_x \subseteq U_x\)) ので、\(U_x\) も開集合である. 従って近傍系は開集合系の部分である.
\(X=\R^n\) の場合、開球が近傍の例. \[B_r^x = \{ y \in \R^n : \|x-y\|^2 < r^2\}\] ただし \(r\) は任意の正数.
これを近傍とすることで開集合系 \(\O(\R^n)\) を定める.
1つ目は自動的に成り立つので、公理の2つ目をチェックする.
\(U_1, U_2\) が開集合であるとする. \(U_1 \cap U_2\) を考える. これが空集合とすると自明に開集合なので、空集合でないときを考える. 空でないので少なくとも1点 \(x\) を含む. \(x \in U_1\) なので、ある近傍 \(B_r^x\) があって、 \[x \in B_r^x \subset U_1\] が成り立つ. 同様に \(U_2\) についてもある近傍があって \[x \in B_{r'}^x \subset U_2\] を満たす. \(r'\) は先ほどの \(r\) と一致するとは限らない.
この2式の \(\cap\) を取ってみると \[x \in B_r^x \cap B_{r'}^x \subset U_1 \cap U_2\] が言える. さて、 \(B_r^x, B_{r'}^x\) はどちらも点 \(x\) を同心とする球なので、その積は簡単に、\(q = \min{r,r'}\) として \[B_r^x \cap B_{r'}^x = B_q^x\] である. 従って、 \[x \in B_q^x \subset U_1 \cap U_2\] この式は、\(U_1 \cap U_2\) についても、やはり近傍 \(B_q^x\) が在って開集合の条件を満たすことを言っている. というわけで \(U_1 \cap U_2\) も開集合である.
大雑把に言えば、 今見たように、近傍と近傍の空でない積が、尚も近傍の形を保っていれば、近傍として良い物で、それは開集合系を誘導するものである.
次に公理の3つ目をチェックする.
\(U_i\) が開集合だとする. \(\bigcup_i U_i\) を考える. やはり空でなく、\(x \in \bigcup U_i\) とする. \(\exists i, x \in U_i\) が言える. \(U_i\) は開集合なので、ある近傍があって \[x \in B_r^x \subseteq U_i.\] \(U_i \subseteq \bigcup U_i\) なので \[x \in B_r^x \subseteq \bigcup_i U_i.\] というわけで \(\bigcup_i U_i\) も開集合.