新幹線こだまには車内販売がないことを知った.
次のような数 \(\alpha\) を考える.
以上を満たす数を 順序数 という. 順序数としてありえるものを小さいものから列挙すると次のようになる. 自明に最小(もちろん \(\in\) の意味で)な順序数は空集合であって, ここから再帰的に構成される.
ここで左辺にはすでに我々に馴染み深い自然数が置いてある. 小さい数から順に割り当てたのであるが, 逆で, 順序数によって自然数を今から新しく定義しようとしている.
順序数の順序関係 \(\lt\) について, 整列順序としての性質を使いたい場合は \(\lt\) と書いて, 集合の包含関係を使いたい場合は \(\in\) を使って書く. もちろん定義から2つは全く同じ意味であって, あくまでニュアンスを使い分けるというだけである.
あらゆる集合は適切に順序 \((\lt)\) を入れることで整列集合にすることができる (例えば実数集合であっても). あらゆる整列順序にはそれと同型な順序数が存在する. ここで同型であるとは, 順序を保つ全単射が間に存在すること.
\[\forall X ,~ \exists \lt ,~ (X,\lt) \text{ は整列集合},\] \[\forall (X, \lt) ,~ \exists \text{順序数 } \alpha ,~ (X,\lt) \simeq (\alpha,\lt).\]このことは選択公理が成り立つことと (ZF上で) 同値な命題.
順序数 \(n\) があるときに, これより次に大きい数は次の手続き \(S\) によって構成される.
\[S(n) = n \cup \{n\}\]実際, 上の \(0,1,2,3\) を見るとこの \(S\) が適用されてることがわかる. またこのようにもなっている.
この \(S\) は いわゆる \(+1\) を意味し, 後続とか successor とか呼ばれる. 順序数 \(\beta\) が, ある順序数 \(\beta'\) で \(\beta = S(\beta')\) と表される時, \(\beta\) は 後続数 だという. \(0\) 及び後続数すべてを集めてきたものを 自然数 という.
\[\mathbb N = \{0\} \cup \{ \beta \mid \exists \beta', \beta=S(\beta') \}\]\(0\) でも後続数でもない数というのがある. これを 極限順序数 という. 最小の極限順序数は次のようなものである.
\[\omega = \{0,1,2,\ldots,n,\ldots\}\]この \(\omega\) の存在は 無限公理 が保証する無限集合そのものである.
\(\in\) の推移律は次のように確認できる. \(\alpha \in \beta\) かつ \(\beta \in \gamma\) のとき, 後者は公理から \(\beta \subset \gamma\) が従う. これと前者から \(\alpha \in \gamma\) が従う.
整列順序なので2つの順序数 \(\alpha, \beta\) について, 次の三通りのいずれかに決まる
\(\alpha \in \beta \implies \alpha \subset \beta\) は公理で定められていた. この逆の \(\alpha \subset \beta \implies \alpha \in \beta\) も成り立つ. ただし \(\alpha,\beta\) は順序数であって, \(\alpha \ne \beta\) とする. (例えば \(\{0,2\} \subset 3\) であるが \(\{0,2\}\) は順序数ではない.) 包含関係 \(\alpha \subset \beta\) は
\[\gamma \lt \alpha \implies \gamma \lt \beta\]と言い換えられる. 今 \(\lt\) とは \(\in\) のことであることに注意. 仮に \(\beta \lt \alpha\) を仮定すると, 上の命題で \(\gamma = \beta\) とすれば前提が成り立つために, \(\beta \lt \beta\) が帰結されるがこれは明らかに矛盾. というわけで \(\alpha \lt \beta\) が導かれる. すなわち \(\alpha \in \beta\) .
順序数の集合 \(X\) について, この上限 \(\sup X\) を考えると, これは \(\forall x \in X, x \in z\) を満たす \(z\) の内, 最小の数のことである.
\[\bigcup X = \bigcup_{x \in X} x\]がこれを満たす. 確認は自明なので省略.
和積を次のごとく定める. これは自然数の範囲では再帰的定義になっている.
自然数に関しては馴染み深い和積の定義になっている. 極限順序数に関しては直感的な結果をもたらさない. 特に可換性がない.
1つ目については \(\omega \not\in \omega\) であることから \(\omega + 1 = \omega \cup \{\omega\} \ne \omega\) である. (一般に \(\alpha \ne S(\alpha)\) は言える.) 2つ目については \(n\) が自然数なら \(n = \{0,1,\ldots,n-1\}\) なので \(1 + \omega = \bigcup \{ 1,2,\ldots\} = \{0\} \cup \{0,1\} \cup \cdots = \{0,1,2,\ldots\} = \omega\) . というわけで \(\omega + 1 \ne 1 + \omega\) になる.
先に述べた整列可能定理を使うと次のようにして 濃度 を定める事ができる.
集合 \(X\) について, これと集合として同型で最小の順序数が唯一に定まる. そして, その順序数のことを \(X\) の 濃度 といって \(|X|\) と書いて表す. 例えば \(| \mathbb N | = \omega\) である.
ここで, あくまで集合としての同型なだけなので, 自身より小さい順序数と同型であるということがありえて, そういったものは濃度としては採用しない. 濃度になり得る順序数のことを 基数 という.
例えば \(\omega + 1 = \omega \cup \{\omega\}\) は \(\omega\) と(集合)同型であるのでこれは基数ではない.
順序は保っていないことに注意せよ.
集合同型であることは基数が等しいことと同値.
\[X \simeq Y \text{ in Sets} \iff |X| = |Y|\]基数の演算は次のように定義される.
これらの演算は基数で閉じていて, 超順序数での演算とは異なる. 例えば和は確かに可換になっていて, \(1 + \omega = \omega + 1 = \omega\) である. 超順序数の \(\omega + 1 = S(\omega)\) は基数ではないことに注意.
無限基数とは次のように定義される基数 \(\aleph_\alpha\) のことをいう.
\(\aleph_1\) とは \(\omega\) の次に大きな基数を表すわけだが, 次の命題を連続体仮説という.
\[\aleph_1 = 2^{\aleph_0}\]このことは ZFC 上では証明できないことが証明されている. この右辺 \(2^{\aleph_0}\) は実数集合 \(\mathbb R\) の濃度であり, これを 連続体濃度 という.