序章

名前も覚えていないし、顔ももう忘れてしまった. それでも、またいつか会うことができれば、きっと分かると思う. 君がどんな肌の色をしてて、どんな声で笑うのかも、どんな髪型だったかも、どんな色が好きで、手にどれだけ皺があって、どれくらい速く走るのか、どんな食べ物が好きでどんな飲み物が好きかも何も知らないけれど、そんなことは問題じゃないと分かる. 僕達は本当の友達だったので、会うことがあればきっと言葉を交わすだろうし、言葉を交わせば自分たちの仲に気づくだろう. なぜなら世界ってのはそういう風に出来ているものだから.

僕達はきっとまた会う約束だけをして別れた.